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(19)澄憲の伝授

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 治承元年(1177年)5月23日、延暦寺から一切経の別院に移った明雲・前天台座主が、一切経の別院から、遠流の地である伊豆へ出発しました。山を預かるほどの執務職の人が、追い立ての役人の前で蹴りたてられながら、今日を限りに都を出て、逢坂の関の東へ赴むこうとしている心のうちは、推し量られて気の毒でなりません。

 大津の打出の浜にもくれば、比叡山の文珠櫻の軒の端々が白々と見えるものを、明雲は二目とは見ずに、袖を顔に押し当てて、むせび泣きました。

 山門(比叡山延暦寺)には宿老・碩学者、仁徳者が多いが、澄憲法印が、そのときはまだ僧都でしたが、あまりに名残を惜しんで、粟津まで送りました。そこでいとまごいをして帰ろうとしたところ、明雲が澄憲の心に感じ入り、年来胸の中に秘めていた天台宗の真理証得の奥法を澄憲に授けました。この法は、釈迦仏の伝授するところ、中インドの波羅奈国の馬喰比丘、南天竺の龍樹菩薩と継いで相伝されてきましたが、澄憲の今日の情によって授けられました。我が国は粟のような小さな辺境の国であり、濁った世の末ですが、この法を受けた澄憲の、法衣のたもとを絞りながら大切に都へ持ち帰ったその心こそ尊いものです。

(2011年10月7日)


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