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(283)梶原景季

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登場人物:源範頼、源義経、生食(名馬)、磨墨(名馬)、源頼朝、梶原景季、佐々木高綱

 都の源義仲追討のため鎌倉から上洛している軍の大手の大将軍は頼朝弟の源範頼で、搦め手の大将軍は同じく弟・源義経。大名約30人が従い、6万騎といわれます。

 当時、源頼朝は、「生食(いけずき)」「磨墨(するすみ)」という2頭の名馬を所有していました。

 ある時、源太・梶原景季が、生食をしきりに所望しました。しかし、頼朝は、「これはいざという時、頼朝が乗る馬。こちらも劣らぬ名馬だ」と、磨墨を、梶原景季に与えました。

 その後、近江の住人で宇多源氏の四郎・佐々木高綱がいとまどいに訪れた際、頼朝は何を思ってのことか、「所望する者はいくらもいたが誰にも与えなかった。そのことを心得よ」と告げ、生食を、佐々木高綱に与えました。高綱は畏まって、「今度の戦いでは、この馬で、真っ先に宇治川を渡ります。もし討ち死と聞こえれば、人に先を越されたと思ってください。いまだ生きている時は、定めて先陣は高綱が務めたものと思ってください」と告げ、御前から退出していきました。居合わせた大名小名たちは「なんと、大胆な言いようだ」とささやき合いました。

 上洛軍は、それぞれが鎌倉を立って進路をとり、足柄山を越えたり、箱根にさしかかったりと、別々に進軍していました。

 駿河の国の浮島で、梶原景季が、高台に上がり、しばらく、多くの馬を眺めました。どの馬も思い思いに飾った鞍を乗せ、様々な「しりがい」が掛けられ、鐙の綱を引かれ、ある馬は左右から手綱を引かれていました。その数は、数千数万にものぼり、ひっきりなしに通過していきます。景季は、そんな馬たちを見ながら、自分が賜った磨墨に勝る馬はないとよろこんでいました。

 そこに、生食と見える馬がやって来ました。金覆輪の鞍を置き、短い総(ふさ)のついた「しりがい」をかけ、鉄を白く磨いたくつわをはめ、口の中から白い泡をふき、たくさんの口取りがついていましたが、それでも引きとどめることができず、踊りながらやってきました。

 梶原景季は、飛んで行って、「これは誰の馬だ」と問いました。「佐々木殿の馬です」との返事で、続けて、「佐々木の三郎殿か四郎殿か」と問うと、「四郎殿の馬です」と答え、生食は通されていきました。

 景季は、つぶやきました。

「見過ごすわけにはいかない。同じく召し使える景季を差し置き、佐々木に生食を与えたことこそ、口惜しい。都へ上った今度のいくさで、源義仲殿の四天王と聞こえる、今井兼平、樋口兼光、楯親忠、根井幸親と組んで死ぬか。あるいは、西国へ渡って、一騎当千と聞こえる平家の侍どもと戦って死のうか。しかし、そうしたとしても、頼朝殿の薄情な心持ちでは報われない。せんずるところ、ここで佐々木を待ち受け、取っ組み、差し違えて、良き侍2人が死んで、頼朝殿に損をさせてやろう」

 景季は、そういって佐々木高綱を待ちました。

(2012年1月11日)


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