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(119)信連合戦、その1

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 以仁親王に笛を渡し御所に戻った信連は、三条通りに面した総門も、高倉通りに面した小門も、共に開いて、役人たちを待ちました。

 案の定、大夫判官・源兼綱と、出羽判官・光長が、都合300騎あまりを引き連れて、15日夜の子の刻(2時)に、以仁親王の御所に押し寄せました。

 兼綱は思うところがあると見えて、門外のはるか先に控えました。光長が馬に乗ったまま門の中へ討ち入ってきました。

 光長が、庭に控えて、大音声を上げました。「以仁親王の謀反はすでに露呈している。土佐の国の幡多に移すため、役人たちが別当宣(検非違使の長官の命令)を受けて、ただ今、迎えにきた。すぐに、出てこい」

 信連が、大床に立って答えました。「ただ今は、以仁親王は御所にいない。参詣中だ。何事だ。事の子細を言え」

 光長が「どうしてこの御所のほかに、どこかへ行くことがあろうか。それならば、下部どもよ、進入して探し出せ」と命令しました。

 信連は再び、「ものの道理もわからない役人どもの申し様だことよ。馬に乗ったまま門の中へ入るだけでも無礼なこと。あまつさえ、下部どもに進入して探し出せとは、なんということを言うのだ。長兵衛尉・長谷部信連がおるぞ。近づいて、後悔するな」と言いました。

 検非違使の下部の中に、金武(かねたけ)という怪力の剛の者がいました。長太刀を抜いて、信連目がけて大床の上に飛び上がりました。それを見て、仲間の者たちが、14、5人、続きました。

 信連はそれを見て、狩衣の帯紐を引き切って捨てました。とたんに、衛府の短い太刀でしたが、刀身を心得て作らせた太刀を思うがままに使い、さんざんに切りつけました。敵は、大太刀、大長刀でしたが、信連の衛府の太刀に切りたてられ、嵐で木の葉が散るように、庭へ、さっと降りていきました。

 5月15日の夜の雲間から月が出て明るかったのですが、敵は地理に不案内で、信連は勝手をよく知っているので、そこの長廊下を追いかけては、はたと切り、ここの行き止まりに追い詰めては、ちょうと切りました。

 光長が「どうして、宣旨の使いを、このように襲うのだ」と言えば、信連は「宣旨とな何だ」と答え、太刀がゆがめば踊り退いて、手で押して直し、足で踏んで直し、屈強の者ども14、5人を切り伏せました。

 信連はそのあと、太刀の切っ先3寸ばかりを打ち折って捨てました。腹を切ろうと腰に手を当てましたが、鞘巻き(つばのない短刀)は落として無くなっていました。よもや、力及ばず。大手を広げて、高倉通りに面した小門から躍り出ようとすると、大太刀を持った1人の男が迎えました。

 信連は長太刀の上に乗りかかり敵の手元に迫ろうと飛びかかりましたが、乗り損じました。股を縫うように貫かれ、心はいまだ強く持っていましたが、大勢に囲まれて、生け捕りにされました。

(2011年11月18日)


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