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レイプシーンに“主観撮り”で挑んだ西川可奈子「目を背けずに観て頂きたいです」【映画「私は絶対許さない」】

2018年3月28日 0時40分 参照回数:

西川可奈子

西川可奈子(撮影:竹内みちまろ/都内にて)


 映画「私は絶対許さない」が2018年4月7日よりテアトル新宿(東京)ほか全国にて順次公開される。15歳のときに性犯罪の被害者となった雪村葉子氏の手記「私は絶対許さない 15歳で集団レイプされた少女が風俗嬢になり、さらに看護師になった理由」を原作とする作品で、精神科医でもある和田秀樹監督がメガホンを取った。

 集団レイプの場面を含め、葉子の主観で撮影を行ったドキュメンタリータッチの同作では、家族をはじめ助けてくれる人が誰もいない状態でセカンドレイプの被害に遭い続け、整形し、風俗嬢になり、看護師になり、SMの女王になるという葉子の生き様が実写化されている。

 1月28日には、インドで開催された第5回ノイダ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。国際的にも注目を集めている中、整形前の葉子を演じた主演の西川可奈子にインタビューを行った(整形後の葉子はW主演の平塚千瑛)。

−第5回ノイダ国際映画祭・審査員特別賞の受賞を知ったときの心境から教えてください。

 嬉しいとともに、少しでも作品に興味を持って頂けたことに対してほっとしました。受賞したことによって、日本でも話題になっています。1人でも多くの方に観て頂けるチャンスになりますので、とても有難いことだと思います。

−完成版を観た感想をお願いします。

 まず、主観撮りという手法が初めての経験でしたので、完成するまでどうなるのか想像がつきませんでした。観るギリギリまで不安だったのですが、出来上がった作品を観たときに、葉子の世界を観て頂くという意味では主観撮りでよかったなと思いました。見も知らない人たちに集団で囲まれて、殴られて、担がれて、酒を飲まされて、ひと晩中まわされるというのは想像を絶することですが、主観撮りだからこそ、それが汗が飛び散る距離感で映っています。この臨場感は主観撮りだから成立したのだなと思いました。

 この作品は賛否両論で、中には観ることができない人もいるかもしれません。でも、同じ女性として観なければならないと思いました。重たい問題ではあるのですが、目を背けてはいけない問題です。手を挙げることができないだけで、性犯罪の被害者の方々は私たちのすぐ近くにいたりもします。そういった方々を勇気付けたいという原作者の雪村葉子さんの思いもあると思います。目を背けずに観て頂きたいです。

−原作を読んで感じたことを教えてください。

 15歳という時期に集団でレイプされ、その後に家族からも見放されてという環境が信じられませんでした。レイプされ、帰ってきた娘を殴る親ってどういう神経をしているのだろうと思いました。

−葉子を演じたいと思った理由は?

 題材自体が強烈なメッセージを持っています。同じ女性として伝えなければいけないし、「この作品を1人でも多くの方に観て頂けるのであれば」という思いでオーディションを受けると決めました。もちろん不安はありましたが、迷いはなかったです。オーディションの段階では、整形前と整形後のどちらの葉子を演じるのかが分からなかったのですが、撮り終えた今は、トラウマを抱えるキッカケになる重要な役だったので、15歳からの整形前の葉子でよかったなと思っています。

−どんな人に観てほしい?

 小さなことを含めれば、トラウマは誰にでもあるのではないかと思います。もちろん、この映画を観たから解決できるわけではないのですが、何かのキッカケにはなるのではと思います。トラウマを抱えている人の中には自分を殺めてしまう人も多いのです。雪村葉子さんは当初は「加害者を殺してやる」という復讐心で生きることができたのかもしれませんし、摂食障害やリストカットをはじめ色々な経験をされていますが、最終的には幸せになることが加害者に対する復讐だと思えるようになるまで、結果として強い意志で生きて来られました。特に、今、少しでも悩んでいる方や、性犯罪の被害者の方に観て頂きたいです。

−映画では、葉子が看護師になる姿や、SMの女王になった姿も描かれます。明確な方向付けがされた作品ではありませんが、あえて「ハッピーエンド」か「バッドエンド」かを選ぶとしたら、本作はどちらだと思いますか?

 どちらでもないと思います。葉子の問題は解決していませんし、人生を狂わされたことは一生消えません。SMの鞭は「今でも許していないぞ」という鞭だと思います。だからこそ、トラウマに関して考えなければいけないのだと思います。

−本作を撮り終えて、家族や家庭環境について考えたことは?

 私の場合は何かがあっても家族が守ってくれる環境だったのでそこで解決したことが多かったのですが、葉子には守ってくれる家族がいませんでした。周りで支える人の存在によって人生はガラッと変わるのだなと思いましたし、葉子に、もし1人でも周りで支えてくれる人がいたら、また違っていたかもしれません。あんなにひどい目に遭ったにも関わらず、家に帰ってきたら家族から殴られ、学校ではいじめられ、傷をえぐられるセカンドレイプがずっと続くわけです。それに比べたら、自分の悩みなんて本当にちっぽけなものなのだなと感じました。

−劇中に、トラウマを抱えた葉子が母親への思いを吐露する場面があります。葉子と同じように孤立無援の状態で、心の中で“声なき叫び”をあげ続ける女性たちに、ひと言、声を掛けるとしたら?

 自分は今、1人だと思っているかもしれませんが、必ず誰かがいるから、と言いたいです。その誰かを見つけるのも自分しだいだと思いますし、ずっと心を閉ざしていたらそういう人たちも寄ってこなかったりもすると思います。少しだけでも心を開くことによって、話を聞いてくれたり、支えてくれる存在になったりもすると思いますので、まずは、“1人だけだ”と決めつけないでほしいです。必ずどこかにいるからという思いがあります。

−公開前から注目を集めていますが、西川さんの周りでの反応は?

 私が体験したことではないのですが、私が葉子を演じたことに対して、「辛かっただろうね」と言ってくれる人がいました。地元の友達からは、「雪の中を走っている可奈子を観て泣きそうになった」や、「これは観なければいけないと思う」や、「私の周りの友達とかにも伝えていくね」などと言ってもらえました。嬉しかったです。

−葉子役に挑戦して、得たものは?

 もちろん、まだすべてができるわけはないのですが、葉子を演じきったことは、自分の中で「できる」という大きな自信になりました。また、みなさんには、この作品で、西川可奈子という人間を知って頂けたらと思います。

−女優としての今後の目標を

 今回は15歳からという役だったのですが、役の年齢などに捉われず、頂いた役に一生懸命、取り組みたいと思っています。一つ、一つ、コツコツとやることから始めたいと思います。それが結果としてキャリアになって、製作陣から「西川可奈子を使いたい」と言ってもらえるところまで、まずは行かなければならないと思います。映画にはたくさん出たいです。今回の作品のように、社会に伝えなければならないメッセージを発信できるような作品に関わっていきたいです。

−「私は絶対許さない」を観たいと思っている人へメッセージを

 世界的な社会問題を訴えている作品でもあります。とにかく被害を少しでも減らしていくためにも、1人でも多くの方に観て頂きたいです。スタッフも含めてみんなで“主観撮り”というスタイルに挑戦しました。この作品に関しては、臨場感など、映画館でしか伝わらないものが絶対にあります。DVDや、スマホなどの携帯機器で観て頂くことももちろん嬉しくはあるのですが、ぜひ、ぜひ、劇場までお越し頂き、観て頂きたいです。

(インタビュー・文=竹内みちまろ)


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