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レイプ被害者を演じた平塚千瑛「伝えなければ」使命感を明かす『私は絶対許さない』

2018年3月29日 23時20分 参照回数:

平塚千瑛

平塚千瑛(撮影:竹内みちまろ/都内にて)


 雪村葉子氏の手記「私は絶対許さない 15歳で集団レイプされた少女が風俗嬢になり、さらに看護師になった理由」を原作とする映画「私は絶対許さない」が2018年4月7日よりテアトル新宿(東京)ほか全国にて順次公開される。

 東北の田舎町の中学生だった15歳のときに性犯罪の被害者となり、家族をはじめ助けてくれる人が誰もいない状態でセカンドレイプの被害に逢い続け、整形し、風俗嬢になり、看護師になり、SMの女王様になるという葉子の生き様を実写化した同作。レイプの場面を含め、葉子の主観で撮影を行ったドキュメンタリータッチの意欲作で、精神科医でもある和田秀樹監督がメガホンを取った。

 公開前から各方面で大きな話題となる中、1月28日には、インドで開催された第5回ノイダ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。さらに注目が高まっている。

 東京で整形した後の葉子を演じた主演の平塚千瑛(整形前の葉子はW主演の西川可奈子)に、同作に挑戦した理由や、撮影中のエピソードなどインタビューを行った。

−まず、第5回ノイダ国際映画祭での審査員特別賞受賞、おめでとうございます。

 ありがとうございます。言葉にならないくらい驚きました。有難い気持ちでいっぱいです。

−映画初主演とのことですが、葉子を演じようと思ったキッカケは?

 雪村葉子さんの原作を読んだときに「絶対に映画化して多くの人に観てもらいたい」と思いオーディションを受けました。「そしてこの事実を伝えなければならない」という使命感にかられました。性犯罪は氷山の一角しか表に出てこないのですが、1人でも多くの方に、15歳の時雪村葉子さんの身に起きた事実を知ってほしいです。また、もっと女性が「助けて」と声を上げることができる世の中になって欲しいと思います。

−原作のどんなところに共感した?

 性犯罪を受けた方はあまりの辛さに絶望自分で命を絶ってしまったりすることもあると思います。ですが、性犯罪という辛い経験を雪村さん御自身は自分の生きるパワーにして生きることを選択しました。女性としてその姿を見たときに、雪村さんの強さ、生き様に共感しました。

−完成版をご覧になった感想を

 撮影の仕方が特殊でしたので完成が楽しみでした。すべてが主人公の主観(POV)での撮影ということで、見ている方も本当に自分が犯されたり、暴力に遭っているという感覚になります。劇中で目を覆いたくなるほど辛かった部分もありましたが、ぜひ、映画館の大きなスクリーンでその臨場感とリアリティを体験して頂きたいと思います。

−特にどんな人に観てほしい?

 雪村さんは中学校3年生のときに集団レイプという過酷な体験をなさいました。その年代のお子さんを持つ親御さんなどには特に観て頂きたいです。原作者の雪村さんも東北出身で、私も山形県出身です。田舎の過疎地等ではこの様な犯罪が起きても表に出ることがない場合も多々あると思います。地域のNPO団体の方や公的機関に携わる方々もこの映画を見て少しでも犯罪防止に役立ててほしいです。

−特に注目してほしい場面を、男性向け、女性向けで、それぞれお願いします。

 私が演じさせて頂いた整形後に関しては、女性には、“鏡の場面”に注目してほしいです。ゆがんだ愛情を受けて「この人とはもう一緒にいてはいけない」と感じることは、女性なら1回はある体験ではないかなと思います。女性なら葉子の気持ちに共感してもらえると思いますので、注目してほしいです。

 男性には、葉子の変わりゆく人生を観てほしいです。冒頭で雪の中で迎えの車を待っていた15歳の葉子が、大人になり、最後はSM嬢になり鞭を振りかざします。「あの純情無垢な女の子がこうも変わるのか」という女性の怖さと強さを知って頂きたいです。

−演じるにあたって、和田監督とはどんな話をしましたか?

 特に印象に残ったのはSM嬢の場面で、途中まで、微笑みながら鞭を振ればよいのか、目の前にいるM男さんを殺すつもりで鞭を振ればよいのか迷っていました。和田監督に相談したときに、「鞭で殴り殺す感じで」と言われましたので、あのような鬼の形相になりました。

−葉子を演じて、「家族」という点で感じたことは?

 言葉よりも先に手が出る父親、葉子に愛情のかけらもない母親、自分の味方をしてくれない家族、そんな家庭環境の中で育ったことが後の葉子の生き方に影響を与えていると思います。私は20歳の時に母を亡くしているので途中から父子家庭でしたが愛情をたくさんかけてもらいました。この家族の中で生きていくのは地獄だったと思います。

−表に出る性犯罪は氷山の一角ですが、もし、孤立無援の状態で心の中で“声なき叫び”をあげ続けている女性たちに声を掛けるとしたら?

 今回の映画を通して、女性の方からも、SNSでフォローして頂く機会が増えました。メールなども頂くのですが、その中に、性犯罪に関するものもあります。「私は絶対許さない」が公開されることを知ったので勇気を出して観に行きたいという内容もありました。同じ様な性被害にあってしまった方に少しずつでも良いので自分を取り戻して前向きに生きて行って欲しい、誰よりも幸せになって欲しいと心から思います。

 ***

 インタビューに快く応じてくれた平塚だが、原作者の雪村氏とは4回ほど会ったそう。和田監督を通して、雪村氏の「あの子だったら、すごい作品になりそうで期待しています」との言葉を聞いたエピソードを告げ、「そうおっしゃって頂けたので、安心しました」と笑顔を見せた。また、「今回はトラウマとの葛藤を初めて演じさせて頂きました。(主観映像のため)声だけで表現をしなければいけないということにも挑戦させて頂きました。それを自分の糧としてステップアップしていきたいなと思います」と本格女優としての活動に意欲。

 「『私は絶対許さない』は実際にあった話で、なごやかに笑っているシーンはまったくないのですが、1人でも多くの方に観て頂きたいです。男性の方には、性犯罪に遭った被害者の方でこんなふうに強く生きている人がいるのだということを知ってほしいですし、女性の方々には、15歳で性被害に遭いながら紆余曲折の末看護師になるという自分の夢を叶えたひとりの人間の生き方に共感して頂ければ嬉しいです」とメッセージを送った。

(インタビュー・文=竹内みちまろ)

平塚千瑛

平塚千瑛(撮影:竹内みちまろ/都内にて)



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