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ミニシアター通信平家物語 > (34)藤原成経と後白河法皇

(34)藤原成経と後白河法皇

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 丹波守で近衛少将の藤原成経は、おりしも、その夜は院の御所法住寺殿に宿直し、まだ退出しないでいました。そこに、大納言・藤原成親の侍どもが院の御所に急ぎ駆け付け、成経を呼び出し、もろもろと報告しました。

 成経は「これほどのことなのに、どうして、平清盛の弟で成経の義父である宰相・平教盛殿のところから、今まで知らせにこないのだ」と告げました。ちょうどそのとき、宰相・教盛からの使者が来ました。

 この宰相というのは、入道相国平清盛の弟で、屋敷は六波羅の総門の脇にあったので、門脇(かどわき)の宰相と言われました。成経にとっては舅になります。

 教盛からの使者は、「何事でしょうか、今朝、西八条の屋敷から、ただちにお連れしろとのこと」と口上しました。

 成経はすでに心得ていたので、近習の女房たちを呼び出して、「昨夜、何とはなしに騒がしかったが、例の山門の大衆が山を下ってくるのかと、よそ事に思っていた。しかし、なんとこの成経の身の上にふりかかって来たぞ。夕方には父の大納言・藤原成親は斬られるとのこと。ならば、成経とて同罪になろう。今一度、御前に参上して、後白河法皇の顔を見たいとは思うが、このような罪人の身になってしまっては、はばかられることだ」と告げました。

 女房たちが急ぎ後白河法皇のもとへ参上し、そのことを告げました。後白河法皇は、今朝の清盛からの使者のこともあり、「これは内々にはかっていたことが漏れたに違いない。ともあれ、成経を今一度ここへ呼べ」との意向でしたので、成経は後白河法皇のもとに参上しました。

 後白河法皇は涙を流し、口を開くこともなく、成経もまた、涙にむせび、申し上げることもありませんでした。

 じきに、成経が後白河法皇の御前から退出しました。法皇は、成経の後ろ姿を遠くから見送り、「世も末とは心さみしいものだ。これが最後で再び会うことがまかりならないとは」と涙を流しました。

 また、成経が、後白河法皇の御前から退出すると、院の人々は皆、局の女房に至るまで、名残を惜しみ、袂にすがり、涙を流し、袖を濡らしました。

(2011年10月12日)


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