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ミニシアター通信平家物語 > (35)六條の悲しみ

(35)六條の悲しみ

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 丹波守で近衛少将の藤原成経は、後白河法皇の御前を退出し、舅の平教盛のもとへ行きました。教盛の娘で成経の妻である北の方は、身重の体でしたが、今朝からこのことの嘆きが加わり、いまにも命が消え入りそうな心地でいました。

 成経は院の御所を出たときから涙を流し続けているが、教盛の屋敷に来て北の方の様子を見て、いかようにもしがたい様子に見えました。

 成経の乳母に、六條という女性がいました。六條が言いました。

「乳をあげるために来て、ご誕生にも立ち会い、あなた様をお育て差し上げてからこのかた、月日の重なるままに、わが身を顧みることもなく、一途に、あなた様がご成人なさったことだけをよろこびに感じていました。ほんのわずかの間とは思いながら、今年で21年、片時も離れることがありませんでした。院内へ参上し、遅くに帰られることでさえ、心配しておりました。ついには、どのような憂き目にあわれるのでしょうか」

 六條が泣くと、成経は、「そんなに嘆くな。宰相がいるからには、命ばかりは、乞いうけてくださろう」とさまざまに慰めましたが、六條は人目もはばからず、泣き悶えました。

(2011年10月12日)


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