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(263)屋島

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登場人物:安徳天皇、平宗盛、重能、通資

 長門の国は平知盛の知行国でした。目代は、紀伊刑部大夫・通資という者。平家が漁師の小舟に乗っていると聞いて、大船100艘余りを集めて提供しました。平家は大船に乗り移り、四国へ渡りました。

 四国では、阿波民部・重能のはからいで讃岐の国の屋島の磯に、板屋で形ばかりの内裏や御所を造りました。完成するまでは、民家を皇居とするわけにもいきませんので、船を御所と定めました。平宗盛以下の公卿殿上人は、昼の間は漁師の苫(とま)でふいた家で過ごし、夜は船で明かしました。

 平家は、龍の頭や、げき(=鳥の名)の首の飾りを船首につけた天皇の船を海に浮かべましたが、浪の上の仮の御所では、静かに過ごすことはできません。

 平家は、月が照る深い潮に愁いを浮かべ、霜が降りた葦の葉のようなもろい命を危ぶみました。洲崎で千鳥が騒げば、暁に恨めしさを増し、遠くで聞こえる舵の音が、夜半に心を痛めます。遠くの松に白鷺が群れをなせば、源氏が白旗を揚げたと肝を冷やしました。夜に雁が遠くの海で鳴けば、強者どもが夜通し船を漕いでいるのかと驚きました。潮風にさらされた紅いほほは色を失い、青い浪に眼はこげ、都の外にいて望郷の涙を抑えることができません。緑のとばりや紅く色どったねやの代わりに、埴生の小屋で葦を簾とし、香炉の煙の代わりに、漁師が藻を焼いて立つ炊事の煙を眺めました。女房たちは、尽きぬ思いに、涙がかれることなく、緑のまゆずみを乱し、かつての面影はなくなっていました。

(2012年1月7日)


平家物語のあらすじと登場人物




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