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男性でも女性でもない中性モデルの柏野美沙さん、アキバのメイドカフェ「メイリッシュ」とコラボ

2020年6月10日

男性でも女性でもない中性モデルの柏野美沙さん、アキバのメイドカフェ「メイリッシュ」とコラボ

柏野美沙さん(写真:竹内みちまろ、2020年6月4日、メイリッシュにて)

 生物学的には男性だが女性の格好で生活をし、中性モデルとして表現活動をしている柏野美沙さん(25歳)と、東京・秋葉原の老舗メイドカフェ「メイリッシュ」とのコラボが2020年6月4日から6月中の期間限定で実施中。期間中の木曜日と日曜日(基本的に15:00~22:00)、美沙さんがメイドさんとしてメイリッシュで給仕を行っている。

 「男性でもなく女性でもない」あるいは「男性でもあり女性でもある」という美沙さんは、女性への性別転換を願ってはいない。これまでについては、「『男性から女性になりたい』、『女性から男性になりたい』ということは一般化していることとして知っていたのですが、“中性”という概念を知識として知らなかったので、もやもやしていた時期がありました」といい、「『自分自身がどうしたいか』、『自分自身がどうなりたいか』ということに対して答えを出せなかった時間が長かったです」と振り返った。

 「高校卒業後、大学進学で広島から上京した18歳か19歳のころに、たまたま遊びに来た秋葉原でコスプレショップに入ったら、“男の娘(こ)になろう”という本がありました。“男の娘”は女装とは違うもので、“体は男性なのですが女の子になる”、“体は男性なのですがかわいいファッションが好き”という男性性と女性性を両立させた概念に初めて出会いました。その本を見て、『あっ、これじゃん!』と思いました。そこから、“中性”として生活を始めました。秋葉原は私に生き方を教えてくれた街です」」と話す。

 ただ、中性であることを周りに伝えることはしなかったそうで、「はじめは、体が男性ということを公開しないで、(いわゆる普通の)女性としてモデル活動をしていました」という。

「これからどうやって自分が生きていけばよいのだろうと考えた結果、しっかりと伝えようと思い、2019年3月8日にTwitterで『わたしは、生物学的には男性です』とカミングアウトしました。それまではずっと、ウィッグで活動していたのですが、同時に、(ボブカットほどの長さの)地毛姿も始めて公開させて頂きました」

「噓に噓を重ねる生活をしていたのですが、『普通に友人としてお付き合いをさせて頂いている方(男性・女性の両方)と、ずっと噓をついたままやっていくのか』や、『もしかしたら、気付いているけど、あえて触れないでくれているのかな』などとずっと考えていました。そんな中、周りの友人たちと一気に疎遠になってしまった時期がありました。『これから先、どうやって生きていけばよいのだろう』と考え、『まずは、体が男性ということをしっかりと伝え、謝るところは謝らないとやっていけなくなるな』と思いました。追い詰められ、思い詰めた状況の中でカミングアウトをしたのですが、みなさん、受け入れてくださり、大変ありがたいなと感じました」

 中性モデルとして活動している人の数については、「MtF(Male to Femaleの略:男性として産まれたが、性自認が女性で、男性から女性への性別移行を望む人)の方や、FtMの方でモデル活動をされている方はいらっしゃると思います。ただ、『男性でもなく女性でもない』もしくは『男性でもあり女性でもある』という方は、私が存じ上げないだけかもしれませんが、少ないのではないかなと思っています」とのこと。

 今後については、「最近なのですが、『“モデル”は、ただ写真に写るだけではないな』と考え始めました。“モデル”には、“ファッションモデル”という種類もありますし、“ロールモデル”という種類もあります。『中性として生きる姿を全部、見せて行くことで、私の生き方を発信する活動』も、モデルとしての活動のひとつであると考え、“中性モデル”として頑張りたいです」と期待に胸を膨らませた。

 そんな美沙さんに、「男性、女性、中性という3つの性別が存在する社会になってほしいですか?」と尋ねてみた。

「そうなれば喜ぶ方はいると思います。ただ、個人的には、まだそういう時期ではないと思っています。私が一番大事にしたいことは、まずは、中性という概念を知ってもらうこと。今はまだ、その段階だと思っています。中性という概念は英語ではNon-binaryとも言いますが、Non-binaryという概念は外国発祥なのです。ただ、だからといって『日本は遅れている』などと声高に叫ぶことではなく、『そういう人もいるんだね』というふうに知ってもらうことを大切にしたいです」

「そうすれば個人の意識というものが変わり、例えば、日々の暮らしの中で、『こういうときって、中性の人が困るんじゃないかな』と考えてくださるようになると思います。ゆるやかではあると思いますが、確実に世の中が変わっていくのではと思います。私は、まずは中性という概念を知って頂きたくて、そのためには、中性の方や、中性という存在に関心がある方だけの中で活動するのではなく、まさしくメイドカフェなど広い社会に参加している場所で活動をしていきたいですし、トークイベントなど、中性という存在としての自分自身の生き方や、あり方を発信する活動もしていきたいです」と声を弾ませた。

 メイリッシュとのコラボは、プロジェクトとして2019年の12月から始まっていたが、今回は、「コロナで大変な状況になってしまったので、何かお力添えができないかと思い、期間限定なのですが、6月の間だけ、お給仕をさせて頂くことになりました」と、美沙さんの提案で始まったそう。

 美沙さんはメイリッシュとのコラボイベントのトークショーなどでメイド服を身に着けたことはあるものの、メイドさんとして給仕をするのは今回が初めて。「ドキドキもありつつ、楽しみな気持ちも半分です」と初回の給仕直前に言葉にしていた。「SNSでコラボのことを伝えたときに、『行きます』と言ってくださった方がいますので、その方たちと、メイドさんとしてお会いできることが楽しみです」とも。

 170センチのスレンダーボディにメイド服を身に着けた姿は圧巻だが、「骨格は男性で、体には何も手を加えていません。ウエストを細くすると擬似的にくびれができるのですが、くびれを作るために毎日、ジャックナイフという筋トレ(1度に10回のターンを3セット)で、腹筋をいじめ抜いています。なので、腹筋が6つに割れてしまいました(笑)」と笑顔を弾けさせた。

 メイリッシュは自粛期間中は休業し、5月7日から短縮営業を再開。メイリッシュのメイド長のまほれさんは、「『ゴールデンウィーク中の秋葉原はゴーストタウン状態だった』と秋葉原にいた方が言っておりました。5月7日の営業再開後、5月の後半から人出は戻り始めましたが、まだまだ少ないです。東京都以外にお住まいの方が東京都に来ることができなかったり、会社から自粛を要請されていたりなどで、秋葉原に行きたいけど行けない方も多いようです」と話す。

 ただ、まほれさんがTwitterでお店の厳しい状況をつぶやいたところ、ツイートを見たお客様が駆けつけてくれているそう。秋葉原もメイリッシュもまだまだ厳しい状況にあるが、メイド歴16年目に突入したまほれさんは、「これまで自分がやってきたこと、メイドとしてのやり方としてこの対応は良かったのかと考えることもありますが、こうして応援してくださる方が沢山いて下さったことが、今までやってきて良かったと思える瞬間です。本当にありがたいです」と感謝していた。


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柏野美沙さん(写真:竹内みちまろ、2020年6月4日、メイリッシュにて)

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柏野美沙さん(写真:竹内みちまろ、2020年6月4日、メイリッシュにて)

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柏野美沙さんとメイド長のまほれさん(写真:竹内みちまろ、2020年6月4日、メイリッシュにて)


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