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ライブパフォーマンスも「鑑賞」から「体験」へ、マンガ&アニメで育った少年たちが『ONE PIECE』への夢を実現【イマーシブシアター「時の箱が開く時」】

2019年1月17日 8時20分 参照回数:



東京ワンピースタワー×イマーシブシアター『時の箱が開く時』(提供撮影)

 観客が客席に座り舞台上の物語を鑑賞するスタイルに対し、演者は移動しながらパフォーマンスを行い、観客は自らの意思で自由に鑑賞しながら物語の中に入っていく体験が出来る体験型演劇「イマーシブ(没入型)シアター」が注目を浴びている。

 日本ではまだ浸透していない「イマーシブシアター」だが、2019年1月10日から1月25日まで、東京タワー フットタウン内の3階層に広がる大型テーマパーク「東京ワンピースタワー」にて、ダンスカンパニー「DAZZLE」プロデュースの新感覚パフォーマンス・東京ワンピースタワー×イマーシブシアター『時の箱が開く時』」が上演中だ(全15公演)。



イマーシブシアター『時の箱が開く時』(初演/2018年9月)


 ダンスカンパニー「DAZZLE」がプロデュースする「時の箱が開く時」は、トンガリ島(東京ワンピースタワー)で行われる一組の結婚式をカギに、ストーリーが展開する。観客は、みずからトンガリ島の住人となり、麦わらの一味≠フキャストやDAZZLEのメンバーたちが繰り広げる同時発生するパフォーマンスを鑑賞しながら、トンガリ島に伝わる「時の箱」の謎を解くというもの。全てのパフォーマンスを同時に見ることができないため、観客ごとに、解き明かされる謎も変化していく。

 同作は、2018年9月22日から9月30日まで「東京ワンピースタワー」にて公演された「時の箱が開く時」の再演となるが、息遣いまで聞こえる距離で、麦わらの一味≠スちがパフォーマンスを繰り広げるところが最大の特徴のひとつ。『ONE PIECE』のキャラクターたちが、2.5次元を通り越し、もはや3次元で活躍する姿に、体験した観客たちから興奮と感動の声が相次いだ。

 再演では、演目を大幅に増やし、より物語世界に没入できる作品に進化しているという。同作を制作し、自らもパフォーマーとして作品に参加するDAZZLEクリエイティブディレクターの飯塚浩一郎さん(1978年6月9日生)に、イマーシブシアターの魅力を伺った。

−初演の手応えから、聞かせてください。

 そもそもイマ―シブシアターが日本ではまだ珍しいです。いわゆる舞台上で演じられる演目を客席で観るわけではなく、作品の中にお客様も入っていく。キャラクターと同じ空間にいられることが、この作品の大きな魅力のひとつだと思います。キャラクターと3次元でコミュニケーションを取ったり、一緒に何かをすることができる点が他の舞台作品にはないところ。お客様の声を聴いていても、そこに楽しんで頂けたことが、まずは良かったと思います。

−客層はどうだったのでしょうか?(初演は9公演、開演はいずれも夜の19:30以降、未就学児童参加不可)

 20代〜30代の女性が8割くらいだと思います。通常営業時の「東京ワンピースタワー」でもライブショー(「ONE PIECE LIVE ATTRACTION『PHANTOM』」)が上演されているのですが、そのライブショーのファンの方に加えて、DAZZLEのファンの方々、漫画・アニメ『ONE PIECE』のファンの方々が来てくれたと感じています。

−パフォーマーとしても参加されていますが、お客さんの会話や息遣いも聞こえるのですか?

 もちろん、全部、聞こえます。会話の内容も分かりますし、ささやき声も、思わずもれてしまうため息も、すべて聞こえます。演者と観客の距離がほとんどない時もありますので、お客さんの気配を感じながら踊っています。お客さんに合わせてパフォーマンスにアレンジを加えることもあります。

−ステージ上で行われる芝居やダンスとはまったく別の表現になるようですね。

 そうですね。ダンスにしても、芝居にしても、通常のステージ上で公演される際は、正面に向けてパフォーマンスすることが基本的な作り方だと思いますが、イマ―シブシアターでは、360度すべてから観られることが大きな特徴です。常にどこからでも観られていますので、ダンスにしても、芝居にしても、より自然といいますか、“本当にそこに存在する人間”としてパフォーマンスすることが求められます。

−“より自然に”というのは興味深いですね。人間は、嬉しい時はいつのまにか鼻歌を歌っていたり、踊っていたりすることがあるかもしれませんが、絶望に打ちのめされた人間が、“私は今、絶望している”ということを、胸を張って、顔も両手も振り上げて、大げさなジャスチャーで伝えることはしないように思えます。

 確かに。ステージ上での芝居やダンスでは、不自然といえば不自然なところがありますし、それは、舞台上で行われる鑑賞型の作品では、より顕著になります。イマーシブシアターでは、ある意味で、お客さんはいないものと考えて、キャラクターどうしが本当にそこで会話をし、冒険をして、戦い、それをたまたまお客さんに目撃してもらうという面もあります。ですので、イマーシブシアターでは、キャラクターを、“より自然に”といいますか、“よりリアル”に感じてもらうことができます。

−ありがとうございます。続いて、今作について教えてください。初演と比べて、進化している点は?

 全ての面で進化してはいるのですが、まず、シーンが大幅に増えています。自分で動き回って、色々な場所で色々なモノを発見していくおもしろさがある作品ですので、パフォーマンスの種類・量が増えるほど、観に来た人それぞれが、まったく別の体験をすることができます。

 また、新たに10シーン以上増えたことにより、ストーリーも深まっているかと思います。本作品オリジナルのキャラクターたちも活躍しながら物語が進んでいくのですが、そのキャラクターたちの演技の時間も大幅に増えていますので、物語のディテールや感情を表現できているのではないでしょうか。

 前回、「歩く時間が少し長かった」という声を頂きました。「探す」というのもイマーシブシアターの魅力の一つで、その時間があるからこそ何かを発見した時の喜びも大きくなるのですが、初めて体験する方もたくさんいらっしゃるので、よりパフォーマンスに遭遇しやすい構造にしました。同時多発的に起こるパフォーマンスを次々に見ていくとストーリーが繋がり、気が付いたらラストまで来ている、というような。お客様は、前回よりも、上演時間を短く感じられると思います。

 もちろん、お客様は謎解きに集中してもいいですし、好きなキャラクターを追いかけてもいいですし、ダンスが観たい方はそこに集中して観ることもできます。お客様のより多様な行動が可能な演出にしたので、様々な楽しみ方ができるようになりました。

−今回さらに進化したとのことですが、「時の箱が開く時」はどのくらいの時間をかけて完成させたのですか。

 シナリオは僕が書いていますが、イマーシブシアターという形式を東京ワンピースタワーで実現するための関係各所との協議を重ねた上で、様々なハードルを越える必要があったのでシナリオ完成までに1年掛かりました。

 シナリオが出来上がった段階から、振り付けやリハーサルなどの実際の作品作りに移ったのですが、作品作りは、初演で3か月、再演で2か月ほど掛かりました。イマーシブシアターは、スタジオなど他の場所で練習しても意味がありません。実際のパフォーマンスの場である「東京ワンピースタワー」は年中無休で営業していますので、夜ごとに「東京ワンピースタワー」に集まって、通常営業が終わった夜の10時以降、練習をしていました。

−後の夜の東京タワーで、そんなことが行われていたのですね。「時の箱が開く時」の最大の魅力は何でしょう?

 作品の一番の魅力は、麦わらの一味≠ニ一緒に冒険できることかなと思います。「時の箱が開く時」では、麦わらの一味≠ェ戦いを繰り広げるのですが、お客様は、その戦いにどんどん巻き込まれていきます。その中で、視覚や聴覚だけでなく五感を通して、通常の舞台では味わえない体験をすることができます。

−「時の箱が開く時」は、“観る”ものではなく、“体験する”ものということですね。ちなみに、「時の箱が開く時」は、2.5次元舞台なのでしょうか?

 2.5次元というよりは、もはや、3次元だと思います(笑)。そういう意味でも、日本が誇るマンガやアニメの新しい見せ方なのかなと思っています。映画が4Dになったり、ゲームがVRになったりと、みんなが“観る”ということを超えようと色々なアプローチをしていますが、ライブパフォーマンスも、“鑑賞”から“体験”になっている、ということだと思います。

−飯塚さんは、子どものころからマンガを読んで育ちましたか?

 僕らDAZZLEのメンバーは、黄金時代の「週刊少年ジャンプ」を読みながら大きくなりました。小学生になったぐらいで「ドラゴンボール」が連載開始になった世代なので、少年時代、青春時代をジャンプともに過ごしました。『ONE PIECE』も、連載開始から読んでいます。「時の箱が開く時」の告知が「ジャンプ」に掲載されたときは、みんなで大騒ぎをして喜びました。マンガやキャラクターを、“もっとこんなふうに楽しめたらいいな”という想いを、子どもの頃から常に持っていました。少年時代の想いも、「時の箱が開く時」には反映されていると思います。

 読者だった自分たちが、作り手として、イマ―シブシアターという形で『ONE PIECE』の世界に参加できたことは、嬉しいといいますか、誇らしいといいますか、とても幸せなことだと思います。

 ***

 開幕日前日に行われたリハーサル後に、インタビューに応じてくれた飯塚さんは、目を輝かせながら、作品に込めた想いを話してくれた。「東京ワンピースタワー」の広報担当者に伺うと、「今後も、イマ―シブシアターに限らず、『ONE PIECE』の新しい見せ方の追及も含めて、やれることは何でもやっていきたい」と話してくれた。

 2.5次元舞台を通り越したというイマ―シブシアター。クールジャパン政策の目玉でもあるマンガやアニメの新しい見せ方という意味でも、まだ体験したことがない方は、ぜひ、「時の箱が開く時」に参加してみてはいかがだろう。

(インタビュー・文・取材:竹内みちまろ)

【東京ワンピースタワー×DAZZLE「イマーシブシアター『時の箱が開く時』】

●開催期間 2019年1月10日(木)〜1月25日(金)
●公演スケジュール:
・1月10日(木)、11日(金)、 1月14日(月・祝)〜17日(木)、 1月20日(日)〜24日(木)……開場20:45 / 開演21:15
・1月18日(金)・25日(金) ……(1)開場17:45 / 開演18:15 、(2)開場20:45 / 開演21:15
※1月12日(土)・13日(日)・19日(土)は休演日となります。
※期間中は通常営業の時間が異なります。詳しくは公式サイトをご確認ください。
●特設サイトURL https://onepiecetower.tokyo/sp/onepiece_dazzle/

【DAZZLE(ダンスカンパニー)】

 「すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ」をスローガンに掲げ、比類ない世界観を持ち、独創性に富んだ作品を生み出し続けるダンスカンパニー。ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させた、独自のダンススタイルを創り上げている。舞台作品においては映像によるテキストやナレーションで物語を紡ぎだし、映画・コミック・ゲームなどのジャパニーズカルチャーの要素を積極的に取り込む。
 代表作「花ト囮」はダンス公演でありながら、演劇祭「グリーンフェスタ」グランプリ、若手演出家コンクール優秀賞を受賞するなど演劇界からの評価も高い。また同作は韓国のSAMJOKOアジア演劇祭(2010)、ルーマニアのシビウ国際演劇祭(2011)、イランのファジル国際演劇際(2012)に招聘された。2013年・2014年には国際フォーラムで行われた舞台「ASTERISK」の企画・演出、2015年には赤坂ACTシアターで行われた歌舞伎俳優で人間国宝の坂東玉三郎演出による舞台「バラーレ」の主演を果たす。2016年は結成20周年を迎え、同年10月には観客投票によるリアルタイムマルチエンディングを採用した公演「鱗人輪舞」を制作。新しい舞台体験の創造に成功し、千秋楽の生中継(AbemaTV)は4万viewを超えた(1週間のアーカイブ込み)。
 2017年8月にはDAZZLEが20年間制作してきた作品の要素を再構築したイマーシブシアター「Touch the Dark」を上演。公演開始と同時にチケットが全てソールドアウト。好評を博し同年10月に再演した際はチケット発売と同時に全てソールドアウトになるなど話題を呼んだ。
 そして2018年3月、日本財団・ユネスコ主催「TRUE COLOURS アジア太平洋障害者芸術祭」にてDAZZLEと障害のあるダンサーの混合チームにてオープニングアクトを務めた他、4月に東京ミッドタウン日比谷オープン記念「Hibiya Festival」Q HALLこけら落とし作品として、人工知能が発達し見た目も人間と変わらないアンドロイドが生まれるであろう未来に、「人間らしさ」とは何かを問う新作舞台「ピノキオの嘘」を上演した。
オフィシャルホームページ> http://www.dazzle-net.jp

【東京ワンピースタワー】

 原作が少年漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中のアニメ『ONE PIECE』史上初の大型テーマパーク。『ONE PIECE』の世界観を体感できるアトラクションやライブショー、レストラン、そしてオリジナルグッズが買えるショップも。
 現在は演出がパワーアップし、上演2年目となる原作者・尾田栄一郎ストーリー完全監修の「ONE PIECE LIVE ATTRACTION『PHANTOM』」や、ウォークスルーアトラクション「ルフィのエンドレスアドベンチャー」内にある3面巨大スクリーン「バトルシアター」で上映中のオリジナルアニメーションなども好評。
 2019年3月にはパーク5年目に突入。2019年アニメ『ONE PIECE』TV放映20周年を記念し、2019年4月には展示内容やライブショーを一新した。
所在地:東京都港区芝公園4丁目2-8東京タワーフットタウン内
営業時間:10:00〜22:00(最終入園21:00)
公式サイトURL:https://onepiecetower.tokyo

(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
(C)Amusequest Tokyo Tower LLP
ダンスカンパニー「DAZZLE」


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