近年のアイドル界の話題のひとつに「大学生プロデューサー」という言葉がある。文字通り、アイドルグループをプロデュースする大学生たちのことだ。
その「大学生プロデューサー」に、2016年の夏、新たな動きがある。
2016年4月17日に設立された芸能&クリエイティブ事務所「かわいんふる」がプロデュースする、原宿系女子高生の3人組アイドルグループ「KAMOがネギをしょってくるッ!!」(略称:カモネギ)がデビューしたのだ。
「カモネギ」は現役女子高校の3人組で、「エネルギッシュでビビッ!!!と(ビビット)な世界観に、ドキドキ(興奮)がとまらないッ!!!」をコンセプトとし、エネルギッシュなかわいさを体現することで、原宿のJC・JK文化を発信する。
「かわいんふる」は大学生の岩崎佑生さん(いわざき・ゆう/早稲田大学4年)が代表を務め、「UNIDOL」(ユニドル/女子大生によるアイドルコピーダンスグループの日本一を決定するイベント)の実行委員を1年生から2年生のときに務めた田中季樹さん(たなか・としき/慶應義塾大学3年)、デザインを学んでいる吉村優希さん(よしむら・ゆうき/武蔵野美術大学2年)などが中心となり、社会人のクリエーターを巻き込んで運営されている。
岩崎さんと「かわいんふる」のメンバーに、「大学生プロデューサー」の状況や、アイドルプロデュースについて話を聞いた。
岩崎さんは、学校で孤立していた中学生時代にたまたま立ち寄った東京・秋葉原のAKB48劇場で、AKB48のファンや、AKB48のメンバーたちに温かく迎えられた経験を持つ。特に人気メンバーの大島優子は岩崎さんにフラットに接したそうで、岩崎さんは「その経験があって自分は救われました。アイドルの良さは、芸能人であるにも関わらずフラットであるところだと思っています。そんなアイドルから元気を貰える人がいる、ということをもっと世の中に広めていきたいと思いました。また、それが、アイドルに助けられた自分の使命でもあると思いました」といい、昨年から、アイドルプロデュースを手掛けている。
そんな岩崎さんに、現在の「大学生プロデューサー」たちの状況を聞いてみた。
「以前から大学生がアイドルグループをプロデュースする事例はあり、現在、活動している大学生プロデューサーのグループもあります。今年に入ってから動き始めたグループもあります。大学生プロデューサーは意外と多いのかなという印象を持っています。最近はさらに、大学生プロデューサーの動きが活発化しているように思います」と答えてくれた。
続けて、岩崎さんに、大学生プロデューサーの活動が活発になった背景を尋ねてみた。
「キッカケは、2つあると思っています。1つは、UNIDOLが知名度を上げてきて、女子大生がアイドルのフリコピをするという文化が根付いてきたこと。もう1つは、UNIDOLを見て、『女子大生でアイドルグループができるのではないか』と考えた大学生が、たまたまですが同時に何人か生まれたことだと思います」
「もし、大学生がアイドルをプロデュースするとして、最低何人いればできる?」と、岩崎さんに聞いてみた。
「お金がないという前提で考えれば、最低3人だと思っています。1人は、最後まで夢を燃やし続け、かつ、最後まで責任を持てる代表者。また、代表者1人だけだと責任が重くて、精神的にくじけそうになることが多々あるので、しっかりと相談することができる信頼のできるプロデューサーが1人。クリエーターが1人で、合計3人です」
クリエーターに関しては、「お金があればプロの方に仕事として依頼するという手段があります。お金がない場合は、友人、知人を頼って声を掛けることになると思います。ただ、クリエーターさんも忙しいですし、自分がやりたい世界観というものがあると思います。なので、自分たちの思い描いているアイドル像に対して、どれだけやりたいと思わせられるのかが大事だと思います」という。
「もし、後輩の大学生から『私もアイドルをプロデュースしたいのですが?』と相談されたら、どんなアドバイスをする?」との質問を岩崎さんにぶつけてみた。
「自分が見ている世界や、こういうことをやりたいという理想に対して共感してくれて、一緒に本気でやろうと思ってくれる仲間をどれだけ集められるのかが大事だと思います。ひとつのコンテンツを作るお仕事なので、方向性の違いがあると、なかなかやっていくことが難しいです。大学生なので、学業との両立も大切だと思いますし、他にもやりたいことがたくさんあると思います。それでもアイドルをプロデュースしたいという思いを仲間たちにどれだけ持ってもらえるのかということは、『アイドルをプロデュースしたい』という声を最初に出す人が考えなければならないことだと思います」と答えてくれた。
そして、「アイドルの大学生プロデューサーになりたいと思っている学生に対しては厳しい言葉になるかもしれませんが」としたうえで、「本気でやるほど自分の可能性が見えてくる楽しい仕事である一方、なあなあな気持ちでやると、誰も幸せになることができない仕事であることは間違いないと思います」と付け加えた。
【コメント】
−アイドルプロデューサーを経験してみた感想を
岩崎さん「ノウハウもなくて右も左も分からない状態だったのですが、試行錯誤をすると意外と結果が付いてくるという面白い世界だなと思いました。その中でも、普通のビジネスとは違って、人を取り扱う仕事ということはしっかりと念頭に置いておかなければならないと思いました。接した方々に不快な思いをさせてしまっただけで、お仕事がなくなってしまったりなど。育てている女の子たちにもちゃんと接していかないと、色々と誤差が生じてきます。論理的な面だけでは成り立たず、感情面までしっかりと考えなければならない難しいビジネスだなと思っています」
−アイドルの「大学生プロデューサー」になりたいと思っている大学生に向けたメッセージを
岩崎さん「実は、僕は、大学生ではあるのですが、自分を大学生とは思っていません。自分の名前で飯が食えるくらいの大きなことをやってやろうという野望の元にやっています。そういった野望を持っている大学生プロデューサーたちが増えてくれると嬉しいなと思います。同世代の力がもっと生まれて来たら、芸能界に新しい風を吹き込ませることもできると思っています」
−アイドルのプロデュースはどこが難しい?
田中さん「色々なアイドルグループがあって、色々なコンセプトがあって、新しいものがなかなか生まれにくく、それで、アイドルはニッチな方向に進んでいると思います。現状は、アイドルのコンセプトを打ち出すことが難しい時代と言えます。どう差別化するのかが、アイドルが成功するかどうかのカギだと思っています」
−後輩の大学生から「自分もアイドルをプロデュースしたいのですが?」と相談されたら、どう助言する?
田中さん「イベンターさんや他の事務所さん、レコード会社さんなど色々な大人の方から力を借りる必要があります。学生の力だけではどうにもならない面もあると思います。なので、人と人との繋がりを大切にし、接することになる色々な方から刺激を受けながらやっていくことが理想的ではと思います」
−クリエーターとしてアイドルプロデュースに関わっている感想を
吉村さん「ポスター、宣材写真、衣装デザイン、プログラミングを含めたWEBデザインなど、デザイン全般を担当しています。原宿の女子中高生のエネルギッシュさというコンセプトがあまりないので、それを世の中に伝えて、みんなを驚かせることができるように、デザイン、動画、衣装も含めて、すべてのアウトプットで彼女たちの魅力を最大限に見せて行けるように全力で取り組んでいます」
「アイドルプロデュースに関わる前は、学校の中でクラスメイトと競争しながら作品を作り上げるという、学生という土俵の中でのみ戦ってきました。アイドルプロデュースになると、デザインに関しても、衣装に関しても、映像に関しても、写真に関しても、すべてを社会に出すことになります」
「今回、アイドルプロデュースに関わって、自分がいた世界は本当に狭いのだなと感じました。自分で言うのもおこがましいのですが、学校の中だけにいたときは、自分はできる方だと思っていました。今回、社会と戦うことになって、自分がまだまだぜんぜんダメだということを痛感しています」
「アイドルの子たちのイメージや印象がすべて、私たちが作るアウトプットで決まってしまうので、緊張感があります。社会に出すとなると、競争相手は完全にプロになります。甘くはないので、自分だけの目で判断をせずに、必ず色々な人に見てもらいながら、慎重に進めています」
−クリエーターから見た、アイドルプロデュースの魅力は?
吉村さん「アイドルプロデュースに関わってみると、クリエーターとしての視野がすごく広がります。自分の力を試してみたいクリエーターにはお勧めできます。技術力も上がるし、学生の中だけではなく、社会の中で、自分のレベルがどのくらいなのかが理解できるようになります」
(インタビュー・文=竹内みちまろ)
【KAMOがネギをしょってくるッ!!!】
原宿に集うJC・JKのエネルギッシュな可愛さを、KAWAIIカルチャーとして発信していく現役JK3人組アイドルグループ。エネルギッシュでビビッ!!!と(ビビット)な世界観に、ドキドキ(興奮)がとまらないッ!!!
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東京アイドル通信