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中野裕太、俳優業の手応えは「夜間飛行」…平成&五輪が終わった後の風景に期待

2018年11月8日 22時00分 参照回数:

中野裕太

中野裕太(撮影:竹内みちまろ、都内にて)

 映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』(監督・脚本:舩橋淳/2018/日本・アメリカ・ポルトガル)が2018年11月10日(土)からシネマート新宿・心斎橋ほか全国で公開される。

 同作では、18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台に2つのストーリーが提示され、時代をこえた愛と復讐の物語が描かれる。柄本佑、中野裕太、アナ・モレイラの3人が、2つのストーリーの中で、それぞれ別の役に挑戦した。

 今回は、2014年以降、俳優業に専念し、“ママダメ”こと映画「ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。」(2017)で主演のモギさんを、映画「新宿スワン2」(2017)では横浜ウィザードのハネマンを演じるなど活躍が目覚ましい中野裕太に、同作の撮影から、俳優業への思いまで、インタビューを行った。

●「ポルトの恋人たち 時の記憶」撮影を振り返って

−「ポルトの恋人たち 時の記憶」の話から聞かせてください。撮影は、北ポルトガルのポルト周辺で行ったとのことですが、ポルトガルパートの撮影で印象に残っていることは?

 ごはんがすごくおいしかったです。昼ごはんのために、毎日、朝からレストランの人がケータリングのトラックで来てくれて、現場で、野菜を水で洗うところから調理をしてくれました。昼ごはんがコース料理みたいに出てくるんです。ちょうど当時グルテンフリーのダイエットをしていたのですが、ポルトガルは主食にパンだけではなくてお米も出てきます。それも含めて、ごはんはとても印象に残っています。

−日本パートでは難しかったことは?

 日系人を演じた日本パートでは、ブラジルのポルトガル語をしゃべる必要があったのですが、ポルトガルでの撮影の大半はポルトガルのポルトガル語を使う必要がありました。ポルトガルから日本に帰ってきたら、発音がまったく違うポルトガル語をしゃべらなければいけないことが大変でした。

−ポルトガル語は、どれくらいで習得した?

 もともと何の知識もなかったのですが、1ヶ月半しか準備をする時間がなかったので、その間、猛勉強しました。現地では、最初は英語を交えて話していたのですが、向こうの人と仲良くなりながら、使えるようになりました。

−ポルトガル語を話せると、現地の人との親密度が違う?

 違うと思います。言語ってある意味では道具のようなもので、他言語を話せることはまるでカギをもう1個持っているような感じです。『このカギだと開きにくいけど、このカギを持っているとすぐに開く』みたいな。ポルトガルのスタッフの中には未だにすごく仲が良い人もいて、その人とは週に1回くらい電話もします。今では仕事のことも、恋愛のことも、全部相談できるほどの大切な友達になりました。

−「ポルトの恋人たち 時の記憶」の公開を楽しみにしている日本の映画ファンに向けてメッセージを

 ポルトガルのことを知ったり、ポルトガルに行ってみようかなと思ったりするようなキッカケとしてでもいいので、「この映画を観ればぜんぜん知らなかった世界が広がるのでは」という期待を持って映画館に行ってくれたらいいなと思います。

●多言語を習得するに至ったキッカケは?

−ポルトガル語のほかに、英語、フランス語、イタリア語、北京語(日常会話程度)を話します。それぞれ、習得したキッカケは?

 英語は、高校2年生のときにアメリカに留学した際、イタリア語は、大学のときにミラノ大学に1年間、留学した際にそれぞれ覚えました。フランス語は、折に触れてちょっとかじっていたのと、その後、フランスの方と仲良くなったりする中で(笑)

 北京語は「ママダメ」がキッカケです。「ママダメ」では、中国語をしゃべる役ではなかったのですが、「ママダメ」がキッカケで台湾の人たちと仲良くなりました。さすがに今ではあまり覚えていないですけど、旅行に行って困らない程度には話します。先日も、たまたま仕事で香港に行っていたのですが、煩雑するマーケットの中の屋台に1人で入りました。そこのおばちゃんと仲良くなって、2回目に行ったときも、「また来たね!」、「うまいんだもん!」みたいな感じで言葉を交わしていました。

 また、その後「男たちの挽歌2018」(中国映画)にも出演したり、アジアづいていた時期があって、一回ちゃんとやってみようかなと思ったこともあります。

−外国の作品、外国との合作への出演も多いですね。

 そうですね。自分では、『外国の作品に出たい』とか、『日本の作品に出たい』と考えることはないのですが、最近、たまたま外国づいています。

−海外の作品にもっと出たい?

 それはあまり意識していないです。『面白そうだな』とわくわくできる作品にいっぱい出会って行きたいと思っています。

−昔から、ボーダーは意識しない?

 本格的に外国の文化に触れたのは高校のときのアメリカ留学が最初です。僕は、福岡の田舎出身なのですが、その際も不思議と違和感がなかったです。イタリア人が福岡の実家に遊びに来たことがあるのですが、うちの家族を見て「ナポリ人みたいだ」と言っていたくらいです(笑) 昔から、ボーダーのようなものは、あまり感じなかったです。

●俳優としての手応え「まだ話す時期ではないので、内緒に(笑)」

−2014年から俳優活動1本に絞り、ここまで来ましたが、2014年以降、ご自身の中で変化は?

 精神的にもそうですが、物理的にも、時間をかけて、作品とがっぷり四つに組めるようになりました。初めて仮面ライダー(2008、2009)をやった時、自分の芝居が本当に下手だなと思いワークショップに通ったり、先生について勉強したりしました。それからずっと自分の中では、芝居を主軸にやってきたつもりなので、それ以外に劇的に何かが変わったというわけではありません。

−2014年以降に出演した作品に中で、俳優としての手応えを感じた作品は?

 それはまだ話す時期ではない気がするので、内緒にしておこうかな(笑) ……その都度、できた気もするし、できなかった気もするし、さぐり、さぐりやっている感じです。でも、それって、いつまでたってもそうなのかもしれませんね。

●「夜間飛行をしている感じがします」…元号が変わり五輪が終わった風景に期待

−俳優としての目標や、やってみたいことは?

 あまりないですね。とにかくいい作品に出会って、いい人とやりたいです。自分がこれまでに、「ある日突然春一番が吹いて、それまで寒かったのが急に温かくなった時のような、何かが劇的に変わったような気持ちにさせてくれた映画」をいくつか観てきました。そういうものを作りたいなと思っています。アクションをやりたい、コメディをやりたい、ラブストーリーをやりたい……などの思いは特にないのですが、ふわっと風の匂いがする作品に出会えたらいいなと思います。

 芝居といいますか、僕がやっていること自体が、夜を飛んでいる感じがします。「夜間飛行」みたいな。先日、たまたま、小説「夜間飛行」(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)を読み終わりました。

 「夜間飛行」では、プロペラ機で、夜中に飛んだりするのですが、街の光もなく、時々現れる民家の小さな光などを頼りにずっと飛んでいくような描写があります。当時、プロペラ機で夜に飛ぶことは、たぶんものすごく怖いことだったんだろうと思います。

 「夜間飛行」にはすごく共感するところがありました。作中で、ファビアンという飛行士が登場します。彼は、結局死んでしまうのですが。さすがに死にたくはありませんが(笑)。

 俳優の仕事をしていて、どこにたどり着くのかも分からない。今は時代もどこか宙ぶらりんのようにも感じるし。もうすぐ平成が終わって元号が変わり、2020年には東京オリンピックも控えている。その後、また違った風景が見えるのかなと期待しながら、今は夜間飛行をしている感じがします。

(インタビュー・文・写真/竹内みちまろ)

【映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』】
製作:2018/日本・アメリカ・ポルトガル
監督・脚本:舩橋淳
出演:柄本佑、中野裕太、アナ・モレイラ、アントニオ・ドゥランエス
2018年11月10日(土)からシネマート新宿・心斎橋ほか全国ロードショー


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