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(51)源信俊の訪問

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 藤原成親は、いまも都のことを懐かしんで嘆き沈んでいたところ、「京より信俊が参りました」と聞くと、起き上がって、「なに、なに。夢か現か。これへ、これへ」と言いました。

 信俊は、そば近くに寄って、成親の様子を見ました。まず、住まいの貧弱さが、ひどかったです。それに、成親の黒染めの衣を見るにつけ、目も当てられず、心も砕けて、涙はさらに止まりませんでした。

 信俊は、しばらくして、涙を抑えて、北の方の言葉を詳細に伝え、そののち、文を取り出して渡しました。

 成親が手紙を開いてみると、あちこちに、水茎の跡が涙にしみていました。幼い子どもたちが、自分を恋しがって悲しむ様子を、わが身が壊れてしまいそうですが耐え忍ぶほかありません、などと書いてきていたので、成親は、日頃に感じている恋しさなどは取るに足らないと悲しみました。

 そのようにして、4、5日も過ぎましたが、信俊は、「ここにいて、成親殿の最期をみとります」と言いました。しかし、監視の武士・難波経遠がどうしてもそれはできないと言うので、成親は、「何日も延びるということはないのだから、早く帰れ」と告げました。

 成親は、「わが身が失われるのも近いというぞ。この世に亡きものと聞いたら、後世をよく弔ってくれ」と告げました。

 成親は、返事をしたためました。信俊が受け取りました。信俊は「また、参上します」と告げると、成親は「あなたが再び来るのを待てそうもない。名残あまりに惜しく、しばらく、しばらく」と、たびたび、呼び返しました。しかし、そうばかりしてはおられないので、信俊は、涙を抑えつつ、都へ帰りました。

 信俊は、北の方に返事を渡しました。開けてみると、成親はすでに出家をされたとみえて、文の奥に御髪が一ふさ、忍ばせてありました。北の方は、二目に見ることができず、「形見が今はかえってうらめしい」と引き伏してしまいました。若君、姫君も、声をあげて泣きました。

(2011年10月16日)

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