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(361)三種の神器

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登場人物:源義経、源弘綱、後白河法皇、藤判官信盛、帥佐殿、治部卿、大納言佐の局、藤原経房、徳大寺実家、藤原泰通、源兼忠、左衛門尉有綱、源頼兼、源義兼、公時、藤原範能、片岡経春

 元暦2年(1185年)4月3日、源義経は、源弘綱を通して、後白河法皇へ奏聞しました。

「去る3月24日の卯の刻(午前6時)、豊前国(福岡県)の田の浦、門司が関、長門の国(山口県)の壇の浦、赤間が関にて、平家をことごとく攻め滅ぼし、内侍所(三種の神器の鏡)、璽(しるし、勾玉)の御箱、ことなく都へ戻します」

 後白河法皇は大いによろこび、弘綱を御所の内庭に招き入れ、合戦の様子を詳しく尋ね、感動のあまり、弘綱を即座に左兵衛に叙しました。

 4月5日、後白河法皇は、北面の武士・藤判官信盛を呼び、「内侍所と璽の御箱がほんとうに返ってくるのか、見てこい」と命じ、西国への使者に立てました。信盛はすぐに馬を賜り、宿所へも帰らず、ムチを持つ手を振り上げ、西を指して、駆けて行きました。

 4月14日、義経は、生け捕りにした平家の男女を引き連れて、播磨の国の明石の浦に着きました。名高い浦なので、夜が更けるままに月が澄み、秋の空の風情に劣りません。

 平家の女房たちは寄り集まって、「先年、ここを通った時は、このような憂き目に遭うとは思いも及ばなかったものを」と、声を忍ばせて泣きました。

 帥佐殿は、つくづく月を眺め、思い残したことがあったのでしょうか、床じゅうが濡れてしまうほどに涙を流し、詠みました。

  ながむればぬるる袂に宿りけり

    月よ雲井の物語せよ

 治部卿の局が詠みました。

  雲の上に見しにかはらぬ月影の

    すむにつけても物ぞ悲しき

 大納言佐の局

  わが身こそ明石の浦に旅寝せめ

    同じ波にも宿る月かな

 義経は心猛き武士ですが、各々がこれほど昔を恋しがり、物悲しくしているのか、と身にしみて、哀れに思いました。

 元暦2年(1185年)4月25日、内侍所と璽の箱が鳥羽に到着したと言われました。内裏から、勘解由小路(かでのこうじ)中納言・藤原経房、検非違使の別当左衛門督・徳大寺実家(実定の弟)、高倉宰相中将・藤原泰通(藤原成通の子)、権右中弁・源兼忠(源雅楽の子)、榎並中将公時(権大納言実国の子)、但馬少将・藤原範能が、武士では、伊豆蔵人大夫・源頼兼(源頼政の子)、石河判官代・源義兼(源義基の子)、左衛門尉・有綱が、迎えに出たといいます。

 その夜の子の刻(深夜12時)に、内侍所、璽の箱が太政官の庁に入りました。宝剣(草なぎの剣)は失われました。神璽は海上に浮かんでいたところを、太郎・片岡経春が取り上げたそうです。

(2012年2月10日)


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