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(338)後鳥羽天皇の即位の儀

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登場人物:後鳥羽天皇、源範頼、源義経、平行盛

 元暦元年(1184年)7月28日、都では、新帝・後鳥羽天皇の即位の儀が執り行われました。神璽、宝剣、内侍所がないままの即位は、人皇82代で初めてのことといいます。8月6日には除目が行われ、源範頼が三河の守に叙されました。源義経は、左衛門尉に。特例で、検非違使の判官となる宣旨を受け、義経は、九郎判官と呼ばれました。

 いっぽう、屋島の平家では、東国から新手の軍兵数万騎が都に着き、攻め下ってくるとうわさされました。また、九州から、豊後(大分県)の臼杵(うすき)、戸次(とつぎ)、肥前(長崎県)の松浦党が同盟して、攻めてくるともいわれました。どのうわさを聞くにつけても、ただ耳を驚かせ、胆をつぶしました。建礼門院、関白・六条基実の北の方(清盛の娘・盛子)、清盛の妻・二位の尼以下の女房たちが寄り集まって、次に、どのような憂き事を聞き、どのような目に遭うのかと、嘆き合い、悲しみ合いました。先の一の谷の戦いで、一門の公卿殿上人の大方が討たれ、侍たちも半分以上が亡き者となりました。平家は、今は力尽きて、唯一、阿波民部重能兄弟が四国の者どもを説得して平家に味方を申し出たことを、高い山や、深い海のように頼りにしているだけです。

 後鳥羽天皇の即位の儀の3日前の7月25日には、平家の女房たちは、寄り集まって、「去年の今日、都を出たのだ。ほどなく、また、この日が廻ってきた」と、急にあわただしくなり、一年前の都落ちの日はみじめだった、などと思い出語りをして、泣いて、笑っていました。

 荻の上を過ぎる風が身に染み、萩の下露もいよいよ繁くなり、恨めしい虫の声が響き、稲葉がそよぎ、木の葉が散る気色が物思いを誘い、旅の空で、秋が、悲しく更けていきました。平家の人々の心中が推し量られてあわれです。昔は、九重の雲の上で、春の花をもてあそび、今は屋島で秋の空を悲しんでいます。冴えわたる月を詠んでも、都の月はどのようだろうと心をはせ、涙を流して、明け暮らしています。

 清盛の孫で、基盛の子・平行盛が詠みました。

  君(=安徳天皇)すめばここも雲居の月なれど

    なお恋しきは都なりけり

(2012年2月2日)


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