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(314)平通盛の最期

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登場人物:平師盛、平通盛、平教経、木村成綱、本田親経、玉井資景

 平師盛(平重盛の末子/備中の守/平清盛の孫)は、主従7騎で小舟に乗り、沖を目指しました。そこに、平知盛の侍で清衛門公長という者が、馬で駆けてきて、「あれはなんと、平師盛殿の船と見た。参ろう」と叫びました。船は汀へ戻りました。しかし、鎧を着た大の男が、馬から船に飛び乗ったのでは、どうにもなりません。小舟はひっくり返ってしまいました。

 師盛が浮き沈みしていたところ、畠山の郎党の次郎・本田親経が主従14、5騎で駆けてきました。馬から飛び降り、熊手で師盛を引き上げて、ついに首を取りました。師盛は14歳といいます。

 平通盛(越前三位)は、山の手の大将軍でしたが、軍勢は崩壊し、敵の大軍に取り囲まれ、弟の平教経とも離れ離れになりました。今は静かに自害しようと通盛が東へ逃げていた時、近江の国の住人で佐々木の三郎・木村成綱と、武蔵の国の住人の四郎・玉井資景ら7騎に取り囲まれ、ついに討たれました。その時まで、通盛には侍が一人ついていましたが、侍は通盛のために戦うことはしませんでした。

 それぞれの城門で、時がたつにつれ、源平合わせて多くの武士が討たれました。櫓の前、逆茂木の下には、人馬のしかばねが山をなしました。緑に埋もれていた一の谷の小篠原は、薄紅色に染まりました。一の谷、生田の森、山のがけ、海岸で、射られ、斬られた平家の兵は2000人あまり。

 今度の一の谷の合戦で、討ち死にした平家の公達は10人といわれます。

平通盛
平業盛
平忠度
平知章
平師盛
平清貞
平清房
平経正
平経俊
平敦盛

 いくさに負け、安徳天皇をはじめ、平家一門が船に乗って逃げたことは悲しいことです。潮に流され、風に従い、紀伊路へ赴く舟もありました。蘆屋の沖に漕ぎ出して、波にゆられる船もありました。あるいは、須磨から明石への海岸沿いを、港を定めず、潮風に吹かれる袖もしおれて、朧に霞む春の月に心を砕かない人はいませんでした。あるいは、淡路の瀬戸を渡り、絵島の磯を漂うと、金葉集に歌われた、鳴き声がかすかでどこで鳴いているのか友を迷わせるという小夜千鳥の声を聞いた者もいました。行方を定めることができず、一の谷の沖合に留まる船もありました。このように、浦々、島々に散らばったので、お互いの生死も分かりません。山陰、山陽、南海の14か国を従え、10万騎まで軍勢を盛り返し、都まであと一歩の場所にある福原まで進んだので、今後こそはと頼もしく思われていましたが、一の谷を攻め落とされ、さぞ、心細く思われたことでしょう。

(2012年1月25日)


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