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(300)三草合戦

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登場人物:源義経、土肥実平、田代信綱

 一の谷の搦め手に寄せた源義経1万騎は、三草山の東の登り口に陣を敷きました。

 いっぽう平家は、三草山の西の登り口に陣を取りました。

大将軍:平資盛、平有盛、平忠房、平師盛
侍大将:伊賀清家、海老盛方
軍勢:3000騎

 その夜の戌の刻、源義経は侍大将・土肥実平を呼び、「平家はここから3里隔てて、三草山の西の登り口に大勢で控えている。夜討ちにすべきか、それとも、明日のいくさにすべきか」と尋ねました。

 侍大将の田代信綱が進みでて言いました。

「平家は3000騎、味方は1万騎。圧倒的優勢です。明日に引き延ばせば、平家に加勢があるかもしれません。夜討ちが良いと思われます」

 土肥実平は、「殊勝にも、田代殿はよく言った。みな、そう進言したいと思っていました。夜討ちがよいかと」と言いました、兵たちが「辺りは真っ暗です。どうしたらよいでしょう」と口々に言うと、義経は、「例の大松明はどうだ」と言いました。土肥実平は、「そうしましょう」と、小野原の民家に火をかけました。民家をはじめ、野にも、山にも、草にも、木にも火をかけたので、昼に劣らず明るくなり、三里の山を越えました。

 この田代信綱は、父は伊豆の国の前国司・中納言為綱の末えい。母は狩野介茂光の娘。為綱が茂光の娘を思って子が生まれ、母方の祖父に預け、弓矢取る身に育てました。俗姓を尋ねれば、後三条院の第3皇子・輔仁親王の5代の孫。俗姓もよい上に、弓矢を取ってもよき武士でした。

 平家方では、その夜、夜討ちがあるとは夢にも思わず、「いくさは定めて明日となろう。いくさにも、眠気は大事。よく寝て、明日のいくさに備えよ」と、先陣は自ら用心しましたが、後陣の兵たちは、甲を枕にし、鎧の袖・えびらなどを枕として、ところかまわず寝てしまいました。

 夜半ばかり、源氏1万騎が、三草山の西の登り口に押し寄せ、ときの声をあげました。平家方ではあまりに騒ぎ、弓をつかんだ者は矢を忘れ、矢を取る者は弓を知らず、あわてふためきました。平家は、馬に踏まれまいと思ったのでしょうか、中を開けて源氏を通しました。

 源氏は落ちていく平家をさんざん攻め、ここかしこで追い詰め、500人余りを討ち取り、大量の負傷者が出ました。

 平資盛、平有盛、平忠房は、三草山を破られて面目なく思ったのでしょうか、播磨の国の高砂から船に乗り、讃岐の屋島へ渡りました。平師盛は、どうしてか逃げ延び、伊賀清家、海老盛方を連れて、一の谷へ行きました。

(2012年1月18日)


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