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(287)畠山重忠

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登場人物:畠山重忠、大串重親、長瀬重綱、本田近経、源頼朝、源範頼、源義経

 畠山重忠の500騎が宇治川に入りました。向かいの平家から、山田次郎が放った矢に、重忠は馬のひたいを射られました。馬が苦しんで跳ねたので、畠山重忠は弓を突いて馬から降りました。岩に当たって激しく流れる水が甲に掛りますが、重忠はものともせず、水の底を潜って、向こう岸にたどり着きました。

 重忠が岸に上がろうとすると、後ろから掴まれました。「誰だ」と問うと、「重親」との答え。「大串か」と確認すると、「そうだ」と返ってきました。

 次郎・大串重親は、畠山重忠が元服のさいに烏帽子をかぶせてやった烏帽子子。大串は、あまりに水が早くて、馬を川で流されました。力及ばず、ここまで、重忠の後ろを着いてきました」と告げました。「いつも殿ばらのような者は、重忠にこそ助けられるのだ」といいながら、重忠は、大串をつかんで岸にほうり上げました。大串はすぐに立ちあがり、太刀を抜いてひたいにあて、大音声をあげ、「武蔵国の住人、大串次郎重親、宇治川の歩立(かちだち)の先陣ぞ」と名乗りました。敵も味方も、それを聞いて、一度にどっと笑いました。

 大串のあと、畠山重忠も岸にのぼりました。重忠は乗り換えの馬に乗り、わめいて駆けました。

 すると、魚陵の直垂(波に魚の紋のある綾織物)に、緋縅の鎧を着て、連銭葦毛の馬に乗り、金覆輪の鞍を置いた一騎の武者が真っ先に駆けてきました。重忠が「駆けてくる者は何者だ、名乗れ」と問いました。武士は「木曽殿の家の子で、長瀬重綱」と名乗りました。重忠は、今日の軍神への血祭りにしようと、長瀬重綱に馬を並べて、組んで引き落とし、自分の鞍の前輪に押し付け、首をねじ切りました。重忠は、重綱の首を、次郎・本田近経の馬の鞍に下げました。

 それをはじめとし戦いが始まり、宇治川を固めた兵たちはよく戦って防ぎましたが、源義経に率いられる東国の大軍が宇治川を渡りましたので、力及ばず、木幡山や伏見の方へ落ちていきました。

 いっぽう、勢田の橋に向かった源範頼の軍勢は、三郎・稲毛重成のはからいで、田上の供御瀬(ぐこのせ)を渡りました。

 宇治川をうち破ると、源義経は、飛脚で鎌倉の源頼朝へ、合戦の次第をくわしく記して伝えました。頼朝は、使者にまず、「佐々木高綱はどうした」と尋ねました。使者は「畠山重忠でした」と答えました。確かに、日記を開いてみると、「畠山重忠、佐々木四郎高綱、二陣、梶原源太景季」と記されています。

(2012年1月14日)


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