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(276)後白河法皇の脱出、後鳥羽天皇の退避

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登場人物:後白河法皇、藤原宗長、矢島行重、藤原頼輔、七条侍従信清、紀伊守範光

 後白河法皇は輿に乗って、他所へ逃げました。ここでも、武士たちがさんざんに射かけました。

 豊後守右少将・藤原宗長は、木蘭地の直垂に、折り烏帽子姿で、後白河法皇の輿に供奉していましたが、藤原宗長が「こちらは後白河院であるぞ。あやまちをおこすな」と告げると、武士たちは皆、馬から降りて畏まりました。後白河法皇から「何者だ」とお尋ねがあり、武士は「信濃の国の住人、四郎・矢島行重」と名乗りました。行重はすぐに輿に手をかけて、輿を五条内裏に入れ、固く後白河法皇を守護しました。

 豊後の国司刑部卿三位・藤原頼輔も法住寺殿に籠りました。黒煙に押し出されて、急ぎ河原に逃げました。そこで、武士の手下どもに衣類を皆、はぎ取られました。頼輔は、素っ裸で立っていました。

 時候は11月19日の朝方、河原には冷たい強風が吹きます。藤原頼輔の兄で越前法橋性意に仕える雑役僧がいくさを見ようと出てきましたが、裸の藤原頼輔を見つけ、「ああ、ひどい」と駆けより、衣の上に白い小袖を2枚重ねて着ていましたが、小袖を脱いで、衣も脱いで藤原頼輔に掛けました。藤原頼輔は、裸の上に短い衣を頭からかぶり、帯もせず、見苦しい後ろ姿となりました。しかしながら、急ぐこともせず、白い衣を着た僧を供にして、ここかしこを徘徊し、「あれは誰の家だ。ここは何者の宿所だ」などと問いました。藤原頼輔の姿を見た人は皆、手をたたいて笑いました。

 後鳥羽天皇は舟に乗り、池に退避していました。武士たちが盛んに矢を射かけました。船の中にいた七条侍従信清、紀伊の守範光が「こちらは主上が乗る船ぞ。まちがいを起こすな」と叫ぶと、武士たちは皆、馬から降りて畏まりました。すぐに、後鳥羽天皇は閉院殿に行幸しました。行幸の様子はあさましく、口にするまでもありません。

(2012年1月11日)


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