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(265)源頼朝

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登場人物:源頼朝、中原泰定

 翌日、泰定は頼朝の館へ向かいました。館の内外に侍たちが控えています。柱と柱の間の場所は16ありました。外には一族や郎党が肩を並べ、膝を組んで並んでいました。内には、上座に一門がおり、末座には関東8か国の大名小名が列座。泰定には、源氏の上座が用意されていました。

 しばらくして、泰定は正殿に向かいました。

 正殿では、高麗縁(へり)の畳が敷かれていて、広間には紫縁の畳が敷かれ、泰定はそこに座りました。御簾が高く巻き上げられ、源頼朝が出てきました。その日は、布の衣に立烏帽子。顔が大きく、背は低く、容貌は優雅で、言葉は鮮明でした。

 頼朝は、まず要件をひと言、告げました。

「そもそも平家は頼朝の威勢を恐れて、都を落ちた。その後に、木曽義仲、十郎蔵人行家が都に押し入り、まるで自分の手柄のような顔をして、官位の任命や、領地の贈答を思うままにしている。あまつさえ、与えられた国を嫌って別の国を所望するなど奇怪なり。

 また、奥州の藤原秀衡が陸奥の守になり、冠者・佐竹隆義が常陸の守となり、頼朝に従わない。源義仲、源行家、藤原秀衡、佐竹隆義を追討せよという院宣を賜りたい」

 泰定は答えました。

「すぐにこの場で書状を渡したいところですが、今は使者の身なので、都へ帰り上り、すぐにしたためてから参ります。弟の史大夫・重能も、そのことを申していました」

 頼朝は笑って告げました。

「今、頼朝の身で、あなた方の書状をいただけるとは思いもよりませんでした。しかしながら、そういうなら、いただきたく存ずる」

 泰定はすぐに都へ向かうと言いましたが、今日ばかりは泊まって行ってくださいと引き留められました。

 泰定は翌日、再び、頼朝の館へ行きました。そこで、萌黄糸縅の腹巻1領、銀づくりの太刀1振、滋藤の弓に狩りに用いる矢を添えられたものを贈られました。馬は13匹。うち3匹に鞍が置かれていました。12人の一族・郎党にも、直垂、小袖、大口、馬、物の具が与えられました。それらだけでも、荷運びに300匹の馬を必要としました。鎌倉を出てからの宿でも、近江の鏡の宿に至るまで、宿ごとに10石ずつの米が置かれていて、多すぎるので、貧しい人らに配りながら帰ってきたといいます。

(2012年1月9日)


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