（２３５）玄�ﾑ

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登場人物：玄�ﾑ、藤原広嗣、吉備真備

　反乱を起こし大野東人に追討された藤原広嗣は、肥前の国の松浦と都を一日で往復できる駿馬を持っていたといわれています。なので、追討される際、味方の軍勢は討ち取られましたが、藤原広嗣はただ一騎、かの駿馬で海中へ馳せ入ったといわれています。その藤原広嗣の亡霊が暴れて、常々、恐ろしいことがあったといいます。

　藤原広嗣の亡霊を鎮めるため、天平18年6月18日、筑前の国の御笠郡で、玄�ﾑ僧正を導師にし、供養が行われました。

　玄�ﾑが高座に上り、金を打ち鳴らす時、空が急に曇り、雷がおびただしく鳴り、雷が玄�ﾑの上に落ち、玄�ﾑの首を取って雲の中に入ったといいます。藤原広嗣の呪詛のためといわれています。

　この玄�ﾑは、吉備真備が唐へ渡った際、同行し、法相宗を持ち帰った人。唐の人が、玄�ﾑという名前を笑い、「玄�ﾑとは、還って亡ぶ『還亡』と音が同じだ。まちがいない、この人が帰朝したのち、難に遭うだろう」と占ったとか。

　藤原広嗣の供養の翌年の天平19年6月18日、玄�ﾑと書かれたしゃれこうべが興福寺の庭に落ちてきて、人ならば2、300人ほどが、どっと笑う声が虚空にとどろきました。興福寺は法相宗の寺だったからです。

　玄�ﾑのしゃれこうべは、弟子たちが拾い、塚を築いて納めました。頭墓と名づけられ、今でも残っているそうです。

　このようなことのため、藤原広嗣の亡霊は崇められて、肥前の国の松浦の松浦明神を「鏡の宮」と号しました。

　嵯峨天皇の時代には、平城先帝が尚侍の藤原薬子の勧めで世を乱そうとした際、嵯峨天皇が祈りのために、第3皇女の裕智内親王を賀茂神社に奉仕する未婚の皇女で伊勢の斎宮に准ぜられた「斎院」に立たせました。これが、「斎院」の初めといわれています。

　朱雀院の御代にも、平将門・藤原純友追討のために、八幡で臨時の御神楽を催したことがありました。

　今度も、そのような例に習い、様々な祈りがありました。

（2011年12月28日）

（２３６）木曽山門牒状

（２３７）比叡山延暦寺からの返牒

（２３８）平家の山門への連署


平家物語のあらすじと登場人物