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(163)平清盛を襲うもののけ・物の怪

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登場人物:平清盛、もののけ、大庭景親、望月(名馬)、安倍泰親

 平家が福原へ都を遷してから、平清盛は、夢見も悪く、いつも胸騒ぎばかりして、変化の者や、物の怪(もののけ)たちが立ち現れるようになりました。

 ある夜、清盛が寝ていたところ、柱と柱の間に入りきらないほどの大きさの顔が出てきて、のぞいてきました。清盛は少しも騒がず、はたとにらみ返しました。すると、変化の顔は消えてしまいました。

 また、新しく造られた岡の御所という所は大木などないのに、ある夜、大木が倒れる音がしました。人ならば2、3000人の声がして、虚空に、どっと笑い声がしました。いかにもこれは天狗のしわざだろうということになり、昼に50人、夜100人の警備衆をそろえ、蟇目(ひきめ)の番と名づけ、蟇目の矢を射させました。天狗がいると思われる方向へ射ると音もせず、天狗がいないと思われる場所を射ると、どっと笑い声がしました。

 別の朝には、平清盛が、帳(とばり)に覆われた貴人用ベッド「帳台」から出て、妻戸を押し開き、内庭を見ると、無数の死人のしゃれこうべで満ちていました。しゃれこうべは、上なるは下になり、下なるは上になり、中なるは端へ転び入り、端なるは中へ転び入り、転び合い、転びのき、ぶつかりあっていました。

 清盛は「誰かいるか、誰かいるか」と呼びましたが、折節、誰も来ませんでした。

 そのうち、たくさんのしゃれこうべが一つに固まり、庭の中に入りきれない程の大きさになり、高さが14、5丈(じょう:約42から45メートル)もあるような山のようになりました。

 その山の中のひとつの大きなしゃれこうべに、生きた人間の目のような大きな眼(まなこ)が千万も出てきて、平清盛を、まばたきもせずに、「きっと」にらみ続けました。清盛は少しも騒がず、立ったまま「ちやう」とにらみ返しました。しゃれこうべの顔は、露や霜が日に当たって消えるように、跡形もなくなってしまいました。

 こんなこともありました。平清盛が一の厩に入れて、世話をする者をたくさん付けて、朝夕になでてかわいがっていた馬がいました。その馬の尾に、ネズミが一夜にして巣を作り、子どもを産みました。

 ただ事ではないということで、7人の陰陽師に、亀トによる占いをさせました。「重き御慎みあるべき」との結果が出ました。

 この馬は、相模の国の住人の三郎・大庭景親(おおばかげちか)が、関東八カ国一の馬として、平清盛に献上したといわれています。黒い馬で額が少し白いので、「望月」と言われました。

 陰陽頭・安倍泰親(あべのやすちか)は言いました。「昔、天智天皇の御宇、馬寮に飼われていた馬の尾に、ネズミが一夜にして巣をつくり、子を産んだのち、異国の凶賊が放棄したと、日本書紀にある」

(2011年12月4日)


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