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鈴木拡樹の“クズ男”は意見が割れる? 高橋由美子主演舞台「時子さんのトキ」ゲネプロレポート

2020年9月15日



公開ゲネプロの様子 (C)舞台「時子さんのトキ」/岩田えり

 2020年9月11日より、東京・よみうり大手町ホールにて舞台「時子さんのトキ」が上演中だ。

 同作は、劇団「ONEOR8(ワンオアエイト)」の田村孝裕による新作舞台。“20世紀最後の正統派アイドル”と評され、人気を博した女優の高橋由美子が、夫と離婚後、息子と疎遠になり寂しさを感じている孤独な女性「時子」を演じる。

 時子と出会い、彼女の心の隙間を埋めていく路上シンガー「翔真」を演じるのは、舞台「刀剣乱舞」シリーズの三日月宗近役で2.5次元作品を牽引し、確かな演技力で映画・ドラマ・舞台など活躍の幅を広げる鈴木拡樹。翔真に息子を重ねて寂しさを紛らわす女と、売れないシンガーの男……。2人が出会い、騙し騙される関係を描く中で時子の“心の隙間”をあぶり出していく。



公開ゲネプロの様子

■鈴木拡樹演じる翔真の“クズっぷり”は意見が割れる?

 物語の始まりは2012年12月、風が冷たいとある街の人通りが少ない広場で、時子はギターの弾き語りをしている路上シンガーの翔真と出会う。曲を弾き、自身を売り込むチラシを配る翔真だったが、誰も見向きはせず。時子は翔真に話しかけ、これをきっかけに交流が始まっていくのだった。

 2人の出会いが描かれた後、物語の舞台は一気に2020年9月へと飛ぶ。出会いから8年後、翔真は音楽活動を続けているようだが、会話の端々から「いまだに売れていない」ことが伝わってくる。しかし、時子はいまだに翔真の成功を心から祈っており、そして信じている。そして、ある日、勤め先のスナックにNPO団体を名乗る柏木(カラテカ・矢部太郎)が訪ねてきて、こう告げる。「翔真という男に騙されているんじゃありませんか?」。

 時子の告白によると、翔真に1000万円以上のお金を貸していた。「どうしてそんな大金を?」「どんな理由で?」と次々に疑問が浮かぶが、時間が一気に進んだため、2人の間に何が起きたのかはその時点ではわからない。観客はその後、2010年7月、2011年1月、2012年、4月、2016年11月と時を遡って時子の独白を交えて何が起きていたのかを見ていくことになる。

 注目したいのは鈴木が演じる翔真の“クズ男っぷり”。「売れない路上シンガー」というだけでなかなか怪しいが、どこか憎めない青年像なのも確か。それゆえ、観る人によって翔真の映り方が異なるので「翔真は根っからの悪者なのか否か」で意見が分かれるように思えた。鈴木がどんなクズ男を演じ、そしてそのクズっぷりを自分ではどう感じたのか、ぜひ劇場に足を運んでその目で確かめてほしい。

■時子が抱える孤独を紐解く

 翔真と出会って8年後の2020年、「翔真に騙されているのではないか?」と問われるが、時子は「私が好きで貸しているだけで騙されていない」といい、詐欺ではないと譲らない。一見、翔真のことを愛しているから庇いたいのでは?と思える主張だが、上記で述べたように、過去を遡ることで徐々に時子の孤独のワケを紐解いていく。

 遡る過去の中には翔真と出会う前の物語もあり、そこには時子の息子・登喜(とき)が登場する。幼少期の登喜を演じるのはお笑いコンビ「カラテカ」の矢部太郎だが、成長した登喜は鈴木が演じており、一人二役を担っている。登喜を鈴木が演じる意味、そして「時子さんのトキ」という舞台タイトル。時子の心の寂しさを垣間見ると、ストーリーを別の角度で理解できるかもしれない。

 ■笑いの要素を担う4人の演者

 舞台には笑える要素も盛り込まれている。高橋と鈴木のほか、矢部太郎、伊藤修子、山口森広、豊原江理佳が出演しており、時子を取り巻く人々を、4人が入れ代わり立ち代わりで熱演している。

 2020年を舞台設定とした場面では、現代と同じく新型コロナウイルスの影響を描写。マスク着用、入店時に検温、役者のセリフに“ソーシャルディスタンス”などといった登場するが、時子の勤め先であるスナックのママを演じる伊藤による検温シーンはシリアスな場面の中で笑いを誘い、矢部が装着しているフェイスシールドをネタにしたくだりもクスッとなった。かと思えば、時子に鋭く意見したり、ドキリとする不気味なシーンもある。舞台上の温度を瞬時に変え、物語のスパイスになるシリアスと笑いがいい塩梅の4人にも注目したい。

 舞台は9月21日まで東京・よみうり大手町ホールで、9月26日と27日の2日間は大阪・サンケイホールブリーゼで上演。検温や観客との距離を空けるなど、新型コロナウイルスの感染防止を徹底した上で実施される。開幕に先立ち、主演の高橋は「このような時に演劇を行う事へのご意見もあるかと思いますが、今私にできる事は駆け抜ける事だけ。皆様に楽しみにお運び頂き精一杯お迎え出来るよう精進いたします」とコメントを寄せている。

【舞台「時子のトキ」キャスト】
時子…高橋由美子
翔真/登喜…鈴木拡樹
時子を取り巻く様々な人物…矢部太郎(カラテカ)、伊藤修子、山口森広、豊原江理佳

【上演スケジュール】
東京・よみうり大手町ホール
・2020年9月11日~21日
大阪・サンケイホールブリーゼ
・2020年9月26日~27日




公開ゲネプロの様子 (C)舞台「時子さんのトキ」/岩田えり



公開ゲネプロの様子 (C)舞台「時子さんのトキ」/岩田えり

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