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ミニシアター通信平家物語 > (59)鬼海が島の住人

(59)鬼海が島の住人

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 さて、鬼界が島の流人たちですが、草葉の蔭にさしかかったはかない命を惜しむというわけではありませんが、丹波少将・藤原成経の舅・宰相平教盛の領地である肥前の国鹿瀬の庄(佐賀市嘉瀬町辺り)から常に衣食が送られていたので、俊寛、平康頼と共に、命をつないでいました。

 中でも、平康頼は、流された時に、周防の国の室積(山口県光市内)で出家していました。法名を性照とつけました。出家はもともとの望みで、

  終にかく背きはてける世の中を

   とく捨てざりし事ぞ悔しき

と詠みました。

 藤原成経と平康頼は、もともと厚く熊野を信仰していたので、「なんとかして、この島の中で、三社権現を勧請し、帰洛を祈願したい」と言いました。しかし、俊寛は、無信心の人で感心を示しませんでした。

 成経と康頼は、心を同じくして、熊野に似た場所はないかと島の中を訪ね歩きました。すると、赤い糸で刺しゅうをしたような神妙な林や堤、空や稜線がめまぐるしく色を変える峰などにはじまり、山の景色や木立の趣に至るまで、本土にも勝りすぐれた場所がありました。

 島の南を臨むと海が広々と続き雲や煙に包まれた波は高く、北を振り返ると、高くそびえた山々から百尺の滝がみなぎり落ちています。滝の音は特にすさまじくて、松風が神の声のように響く、那智の地主神の飛瀧権現がいる那智の御山にそっくりでした。そのため、そこを、那智の御山、と名づけました。

 ほかにも、この峯は新宮、あれは本宮、かれは何々王子、これは何々王子などと言って、平康頼が先に立ち、藤原成経が続き、毎日、熊野詣での真似をして、「南無権現金剛童子、願はくは憐れみを下さり、われらを今一度、故郷へ返し、妻子に会わせてください」と帰朝を祈願しました。

(2011年10月17日)


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