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(53)藤原実定

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 徳大寺大納言・藤原実定は、平清盛の次男・平宗盛に、自分を飛び越えて大将になられたので、しばらく様子を見ようと、大納言を辞して籠居していましたが、やがて、出家しようと言ったので、身内のものは上下を問わず皆、悲しみました。その中に、蔵人大夫・藤原重兼という、大臣などに使える四位、五位ほどの人がいました。

 ある月夜、藤原実定は、ただ一人で、南面の格子戸を開けさせて、月へ向かって詩歌などを口ずさんでいたところ、重兼がやってきました。

 実定が「誰だ」と問うと、「重兼が参りました」と答えます。実定が「夜はとっくにふけているのに、このような時間に何事か」と告げると、「今夜は月が冴えています。心のおもむくままに、参りました」と答えました。実定は、「神妙なことだ。まことに、今宵はなんとなく心細く、ことのほかたいくつであった」と言いました。

 そうこうするうちに、最近の話や、昔の話などをして、そののち、藤原実定が言うには、「平家の繁盛する様子を細かくみると、嫡子重盛、次男宗盛は、左右の大将だ。やがて、三男知盛、嫡孫維盛も続きよう。平家の誰もかれもが出世となると、他家の人々は、いつ大将になれるともおぼつかない。されば最後には出家するしかない。いざ、出家しよう」。

 重兼は、はらはらと涙を流して、言いました。

「実定殿が出家されたら、身内の上下の者が皆、路頭に迷います。重兼に、ちょっとしたアイデアがあります。たとえば、安芸の国の厳島神社は、平家一門がたいそう敬っています」

「厳島神社へお参りなされませ。厳島神社には、内侍(ないし)といって、優雅な舞姫が多くいますので、お参りを珍しく思われて、もてなしをするでしょう」

「何を祈願したのですかと尋ねられたら、有りのままにおっしゃればよいでしょう」

「さて、厳島神社からお帰りの際は、おもだった内侍一両人を、都までお連れしてください。そうすれば、おそらく西八条へ参上するでしょう。清盛殿が『何事だ』と問えば、内侍たちは、有りのままに申し上げるでしょう。清盛殿は、ちょっとしたことにもいたく感心する人なので、それなりのはからいもあると思われます」

 藤原実定は「それは思いも寄らなかったことだ。ならば、さっそくお参りに行こう」と、にわかに精進を始め、厳島神社へお参りに行きました。

(2011年10月16日)


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