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(40)平重盛の着座

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 まさに出発せんが時に入ってきた平重盛の姿を見ると、平清盛は、伏し目がちになり、ああ例の重盛の聖人君主が始まることよと思いました。ならば、おおいに諌めてやろうとは思いましたが、さすがにわが子ながら、内には、仏教の五戒(不殺生、不邪淫、不飲酒など)を保ち慈悲を第一として、外には儒教の五常(仁義礼智信)を乱さず、礼儀正しい人だったので、烏帽子直衣姿の重盛に、鎧を腹に巻いて会うことはさすがに恥ずかしく思われたのか、ふすまを少し閉じて、鎧のうえに白絹の衣を慌ててまといました。

 清盛は、鎧の胸板が垣間見えるのを隠そうと、しきりに衣の胸を合わせようとしていました。重盛は、弟・宗盛の上座に着きました。清盛は何も言わず、重盛も黙っていました。

 少しして、清盛が、「あの成親卿の謀反などは取るに足らない。すべては後白河法皇のたくらみであるぞ。しばらく世を静めるために、後白河法皇を鳥羽の北殿へ移すか、ここへ御幸してもらおうと思うが、どうか」と口を開きました。

 重盛は、聞くに堪えず、はらはらと涙を流しました。清盛が「これは、どうした、どうした」とあきれ顔で声を掛けました。

(2011年10月13日)


(41)平重盛の諫め

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平家物語のあらすじと登場人物




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