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(31)藤原成親の嘆願

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 清盛の嫡子の小松殿内大臣・平重盛は、常日頃から善悪に騒ぎ立てる人ではないので、この日も、太陽が高く登ってから、嫡子の権亮(ごんのすけ)少将平維盛を車の後ろに乗せ、護衛4、5人、隋人2、3人を供にし、軍兵は一人も連れずに、悠然とやってきました。

 一門の人々は、清盛をはじめとして皆が面食らったように見えました。平重盛が中門の口で車から降りると、平貞能が近寄り、「これほどの大事になぜ、軍兵を一人も連れてこないのですか」と問いました。

 平重盛は、「大事とは天下の大事をいう。このような私事を大事というとはなにごとか」と答えました。武器を携えた武士たちは、おちつかずそわそわして見えました。

 その後、重盛は、「大納言殿はどこにいらっしゃるのだ」と、あちこちのふすまを開けて見て回りました。あるところに、蜘蛛の手のように八方に木を打ち付けた部屋がありました。重盛がここだと思って開けてみると、はたして、藤原成親がいました。涙にむせて、重盛を見上げることもしません。重盛が「いかがなされましたか」と聞くと、ようやく気がつき、うれしそうな気配を見せます。地獄で罪人どもが地蔵菩薩を見たら、このような様子だろうと思えて哀れでした。

 藤原成親は言いました。

「何ごととおおせか。今朝からこのような憂き目にあっています。あなたが来て下さると深く頼みにしていたところ、やはり来て下さった。平治の乱の際にすでに処刑されるべきだったのに、あなたのおかげで助命されました。あまつさえ、正二位の大納言まで昇進し、すでに、歳は40歳を超えました。ご恩は寿命を超え時代を超えても報い尽くしがたいのですが、このたびもまた、甲斐無きこの命をお助け下さい。命さえ助けてくだされば、出家し、どのようなへんぴな山里にでもこもって、一筋に、菩提を弔って残りの生涯を過ごします」

(2011年10月12日)


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