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(355)壇の浦の白旗

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登場人物:源義経、平宗盛、安倍晴信、阿波民部重能、平知盛

 源平の強者どもは、互いに面も振らず、命を惜しまず、戦っていましたが、平家には十善の帝王・安徳天皇と三種の神器があります。源氏方は旗色があやしく見えました。

 そこに、しばらくは白雲にも見えたものが虚空を漂いました。雲ではなくて、主のない一流の白旗でした。白旗は源氏の船の舳先で、旗竿に結びつける旗の緒に触れるくらいに舞い下りてきました。

 それを見た源義経が、叫びました。

「これは八幡大菩薩の現れぞ」

 義経はよろこび、そして、甲を脱ぎ、手水とうがいをして、これを拝しました。すると、源氏の強者どもが、義経に習いました。

 また、沖から、1、2千頭のイルカの群れが、水面に頭を出して息をしながら、平家の船の方へ向かって泳いできました。平宗盛は、小博士の安倍晴信を呼んで、「イルカはいつも多いが、いまだこれ程の数はない。占ってみよ」と命じました。

 安倍晴信が「このイルカが沖へ帰ったら源氏が滅びます。平家の船の下を通り過ぎたら、お味方のいくさが、危うくなります」と占いましたが、安倍晴信が言い終わらないうちに、平家の船の下を、まっすぐにイルカの群れが通っていきました。

 平家の運命も今が最後と見えました。

 阿波民部重能は、この3年の間、平家に味方して忠義を尽くしてきましたが、子息の田内左衛門教能を生け捕りにされ、また今は、かなわないと思ったのでしょうか、たちまちに心変わりして、源氏に味方しました。平知盛は「やはり、重能めを、斬って捨てておくべきだったのだ」と悔しがりましたが、後の祭りです。

 平家の戦術は、強い武者を兵船に乗せ、雑人を中国風の大船に乗せ、大船に引きつけられた源氏を兵船で取り囲み討ち取ろうというものでした。しかし、源氏に寝返った重能がそのことをばらしてからは、大船には目もくれず、大将軍が隠れて乗っている兵船を攻めました。

 その後、四国と九州の強者たちが皆、平家に背いて、源氏につきました。今まで平家に従っていたにもかかわらず、安徳天皇に弓を引き、太刀を抜きました。

 平家の船は、あそこの岸に着けようとしても、波が高くて思うようになりません。こちらの汀に寄ろうとすると、敵が矢先を揃えて、待ち構えています。

 源平の争いは、今日が最後と見えました。

(2012年2月8日)


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