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(345)大坂越え

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登場人物:源義経、近藤親家

 義経は再び近藤親家を呼び、尋ねました。「屋島の平家の軍勢はどのくらいいるのか」。親家の返事は「千騎は越えますまい」。「それは少ないぞ」と義経が確認すると、「このように四国の浦々、島々に、50騎、100騎とさし置かれています。そのうえ、阿波民部重能の嫡子の田内(でんない)左衛門教能が、召集に応じない伊予の四郎・河野通信を攻めるために3000騎で伊予へ向かっています」。義経は、「それはよいタイミングだ。ここから屋島へはどのくらいだ」と聞き、親家は「2日路です」。義経は、「さあ、敵が気が付く前に攻め寄せるぞ」と、馬にムチをうち、ときにひそめさせ、駆けさせ、歩かせしながら、阿波(徳島県)と讃岐(香川県)の国境の大坂越という山を、夜を徹して、越えていました。

 夜半程に、鳥の子などの全紙を用いた書状を細くたたんで折った「立文」を持った男と、義経は、道連れになりました。

 夜のことなので、相手の男はまさか敵だとは思わずに、味方の兵が屋島へ向かうものと思ったのでしょう、打ち解けて、よもやま話を始めました。

 義経は、「われは屋島へ行くのだが、道を知らないのだ。案内してくれぬか」と頼むと、「私は何度も行っているので、よく知っています」と答えました。義経が「さて、その文は、誰が誰に宛てたものか」と聞くと、「これは都の女房が、屋島の平宗盛殿へ出したものです」。義経が「どのような文か」と問うと、「何を隠そう、源氏がすでに淀川尻に出てきているので、まちがいなく、それを告げる文でしょう」とのこと。

 義経は、「ほんとにそうなのか。その文を奪え」と部下に命じ、文を奪うと、「やつをからめ捕れ。首は、罪作りなので斬るな」と、山中の木に縛り付けさせました。

 源義経が文を開いていみると、確かに女房からの手紙と思え、「義経はすばしこい男ですので、どのような大風、大波も嫌わずに、攻め寄せて来ると思ってください。決して、軍勢を分散させることなく、よくよく、用心してください」と書かれていました。義経は、「これは天が義経に与えた文だ。頼朝殿にも見せよう」と、懐に深く収めました。

 明けた18日の寅の刻(午前4時)、讃岐の国の引田という場所で、義経は、軍勢に休息を取らせました。ここから、白鳥・丹生屋を、うち越え、屋島の城へ攻め寄せることになります。

 義経は、また、近藤親家を呼びました。「ここから屋島の館まではどんな道だ」。親家は、「お伝えしたいことがあります。浅い場所です。潮が引けば、陸と島の間は、馬の下腹も浸かりません」。義経は、「それなら、敵が気付く前に寄せてしまえ」と、高松(古高松、高松市東部)の民家に火をつけて、屋島の城郭へ攻め寄せました。

(2012年2月6日)


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