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ミニシアター通信平家物語 > (289)源義経の後白河法皇救出

(289)源義経の後白河法皇救出

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登場人物:源義経、後白河法皇、成忠

 大将軍・源義経は、いくさは軍兵に任せ、自分は、後白河法皇が危ない目に逢うだろうから守ろうと、自ら5、6騎を連れて、院の御所・六条西洞院に駆け付けました。御所では、大膳大夫の成忠が東の屋根をふいた土堀に登り、おびえながら見渡していました。すると、5、6騎の武士がゆるめた甲を後ろにかぶり、袖を春風になびかせ、白旗をあげ、黒煙を立てて駆けてきます。

 成忠は、「ああ、おそろしい。木曽がまた来た」と知らせると、院中の公卿・殿上人、かたわらの女房にいたるまで、今度こそ世の破滅だと、手を握り合い、かなうはずのない願いを立てました。しかし、成忠が続けて、「今日初めて都に入った東国の武士のようだ。皆、笠じるしが違っている」と告げましたが、伝え終わるか終わらないかのうちに、義経は門前で馬から降り、門をたたき、大音声で告げました。

「鎌倉の源頼盛の弟・九郎義経が、宇治橋を打ち破り、御所の守護のため駆け付けました。門を開けて、入れてください」

 成忠はあまりのうれしさに、急ぎ土塀からはね下りましたが、腰をつきそこねました。しかし、痛みはうれしさに紛れて感じませんでした。はいつくばりながら御所の中へ入って、後白河法皇に告げると、後白河法皇は感動して門を開けさせました。

 義経のその日の出で立ちは、赤地の錦の直垂、紫色の糸が段々濃くなるように縅した鎧、鍬の形の金具を打った甲の緒を締め、金色に輝かせた太刀を帯び、24本刺した切斑の矢を背負い、滋藤の弓の鳥持ちの所に一寸ばかりに切った紙を左巻きに巻いていました。それが、今日の大将軍のしるしと見えました。

 後白河法皇は、中門の側にある窓の格子からのぞき、「勇ましい者どもよ。皆、名乗れ」と言いました。まず、大将軍・源義経が名乗りました。安田義定、畠山重忠、梶原景季、佐々木高綱、渋谷重資も、続いて名乗りました。義経を含めた武士6人は、鎧の色はそれぞれでしたが、顔も、魂も、体つきもいずれも劣らない者たちでした。

 成忠が取り次ぎ、義経を中庭の端に呼び、合戦の次第を詳しく尋ねました。義経は畏まって答えました。

「鎌倉の源頼朝が、木曽の狼藉を鎮めるため、範頼・義経を先頭に6万騎を上洛させました。範頼勢は勢田から来ますが、まだ一騎も姿を現していません。義経は宇治橋を攻め破り、この御所を守護するために馳せ参じました。義仲は賀茂河原を北の方へ逃げましたが、軍兵どもに追わせています、今頃は、もう、討ち取っているでしょう」

 義経がこともなげに答えると、後白河法皇は大いに感激しました。

「義仲が残党を集めて、狼藉をするかもしれない。お前は、この御所をよくよく守れ」

 義経は承り、四方の門を固めて待ちました。兵たちが集まってきて、ほどなく1万騎ばかりになりました。

(2012年1月14日)


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