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(267)源義仲の牛車

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登場人物:源義仲、今井兼平

 その後、義仲は参院しましたが、官位のある者が直垂で出仕するのはよくないと言って、急に、狩衣を手に取りました。しかし、まとう様、烏帽子のかぶり方、着方、指貫の輪に至るまで、かたくなで優雅さのかけらもありません。鎧を着て、矢を背負い、弓を取り、甲の緒を締め、馬に鞭うつ姿とは比べものになりません。そんな義仲ですが、さすがに体をかがめて、牛車に乗り込みました。

 牛車の牛飼いは、平宗盛の牛飼いでした。牛車も宗盛が乗っていた高級車。すぐれた牛で、ながく車を引かせておりませんでしたが、出発のためにひと鞭くれると、久しぶりの車引きに興奮したのか、飛び出しました。

 義仲はたまらず、車の中で仰向けに倒れました。何とかして起き上がろうと、左右の袖を牒が羽を広げたようにばたばたさせました。しかし、どうしても起き上がることができません。

 義仲は「牛飼い」と言えず、「やい、小牛健児(こうしこでい)よ、やい、小牛健児よ」と呼びました。牛飼いは、車をやれと言われたと勘違いして、5、6町(約550から650メートル)を一気に走りました。

 今井兼平が馬で追いつき、「どうして御車を、このように走らせるのだ」と牛飼いを叱りつけると、牛飼いは、「あまりに牛の鼻が強くて」と答えました。その後、牛飼いは、義仲と仲直りしようと思ったのか、「そこにある手形というものに、取りついてください」と声を掛けました。義仲は手形を、むずとつかみ、「あっぱれな用意だ。これは、牛健児のはからいか、宗盛殿のはからいか」と聞いたとか。

 そうこうしているうちに、牛車は院の門前に到着しました。義仲は車の後ろから降りようとしましたが、雑役駆使に従事する都の者が、「車は乗る時は後ろからですが、下りる時は前からお降り下さい」と告げました。義仲は、「どうして車なら素通りしてよいことがあろうか」と、ついに、後ろから降りてしまいました。

 その他、義仲にはおかしなことが多くありましたが、義仲を恐れて誰も口には出しませんでした。牛飼いは、とうとう斬られてしまいました。

(2012年1月9日)


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