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(241)安徳天皇の都落ち

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登場人物:安徳天皇、建礼門院平徳子、平時忠、平信基、平時実、藤原基通、進藤高直、玄上(琵琶)、鈴鹿(和琴)

 後白河法皇の雲隠れを知った平家は、「せめて安徳天皇の行幸だけでも」と、翌日卯の刻(午前6時)に、行幸の輿を御所に寄せました。安徳天皇はいまだ6歳なので、何事も知らず輿に乗りました。建礼門院・平徳子が、輿にいっしょに乗りました。

 大納言の平時忠は、「~璽、宝剣、内侍所、天皇の法印、宝剣につけてある鍵、玄上(琵琶)、鈴鹿(和琴)なども忘れるな」と下知しましたが、慌てふためいていたので、取り忘れる物が多くあり、清涼殿に安置されている御剣などは置き忘れていきました。

 すぐに、平時忠、平信基、平時実の3人は、衣冠姿のままで供奉しました。行幸に付き従う近衛の左右の中将と、御綱佐は、甲冑と弓を帯びて、行幸の供をしました。七条通りを西へ出て、朱雀大路を南へ走りました。

 明け7月25日、天の河が出ていた夜が明けて、雲が東山にたなびき、治承4年(1180年)に都遷りして騒がしかったことも、このようなことの前触れだったのかと、今こそ思い知らされました。

 摂政殿・藤原基通も行幸に供奉していましたが、七条大路で、髪の毛を結った童子が御車の前を、つと走り抜けるのを見ました。その時、童子の左の袂に、「春の日」という文字が現れました。「春の日」と書けば「春日」と読めますので、法相宗を擁護する春日大明神が大識冠・藤原鎌足の子孫を守ってくれるのだと、頼もしく思いました。

 すると、かの童子のものとおぼしき声がしました。

  いかにせむ藤の末葉の枯れ行くを

    ただ春の日にまかせたらなむ

 と、藤原氏の末裔の基通の行き先を憐れむことを暗示させる歌で、基通はがくぜんとし、供の進藤左衛門尉高直を呼び、「この世の中の有り様を案ずるに、安徳天皇の行幸ではあるが、後白河法皇の御幸ではない。このままでは、行く末が案じられるが、いかに」と問いました。高直は言葉の含みを理解し、牛車の操者に目配せし、車を返して、大路を上り、飛ぶが如くに、北山周辺の知足院へ行ってしまいました。

(2011年12月30日)


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