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(238)平家の山門への連署

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登場人物:平宗盛、平通盛、平資盛、平維盛、平重衡、平清宗、平経盛、平知盛、平教盛、平頼盛、明雲

 平家は、源義仲が牒状を比叡山延暦寺に送り、延暦寺からも源氏に同心する旨の返牒が出たことを知りませんので、「奈良興福寺、園城寺三井寺は、鬱憤を含んだ間柄なので、平家の味方につくように語らっても効果はない。しかし、平家は、比叡山延暦寺には、いまだ、あだを結んだことはない。山門もまた、当家に不忠をしたことはない。詮ずるところ、日吉山王権現に祈誓をし、3000の衆徒に平家に味方するよう語らってみよう」と、一門の公卿10人が、同心連署の願書を書き、比叡山延暦寺へ送りました。

平家の比叡山延暦寺への連名願書


 敬って白します。延暦寺をもって氏寺とし、日吉の社をもって氏社とし、一門で天台の仏法を仰ぐことを。右、当家一門、ここに祈誓します。

 そのわけは、比叡山延暦寺は桓武天皇の御代に、伝教大師が入唐し帰朝してのち、天台の教法をその場所に広め、大日如来の大戒をその内に伝えてからこの方、もっぱら、仏教繁盛の霊窟として、久しく鎮護国家の道場です。

 まさに今、伊豆の国の流人・源頼朝が身のとがを悔いず、しかのみならず、謀略に同心する源氏ら、源義仲、源行家などが徒党を組んであたまの勢力を作っています。隣国、遠国の数か国を掠め取り、朝廷への年貢・貢ぎ物を横領しています。

 そのため、平家累代の勲功に習い、また、当代の弓馬の芸に任せて、速やかに、賊徒を誅し、凶徒を降伏させるべき由、いやしくも勅命を受けて、征伐に力を注いでいます。

 しかし、ここに、魚鱗・鶴翼の陣をもってしても官軍は勝利を得ていません。勢いに乗る逆賊の旗があまたはためき、勝ちに乗しております。

 ここに至り、もし、神明仏陀の加護を得られなかったならば、どうして、反逆の凶徒を鎮めることができましょう。いわんや、平家の祖を思えば、かたじけなくも、延暦寺建立の本願を起こされた桓武天皇の末裔。いよいよ、崇重すべし。いよいよ、恭敬すべし。自今以後、山門によろこびあらば一門のよろこびとし、社家に憤りあれば当家の憤りとし、各々がそのことを子孫に伝えて永く信仰を失わせません。

 藤原氏は春日社興福寺をもって、氏社・氏寺とし、久しく、法相宗(大乗仏教)に帰依しています。平家は、日吉社延暦寺をもって氏社・氏寺とし、天台の教えに知遇します。興福寺はかつての遺跡です。藤原氏のための栄華を思っています。延暦寺は今の精祈です。君のため、逆賊の追討、懲罰を請います。

 仰ぎ願わくは、日吉山王七社、七社以外の末社・眷属、護法聖衆、東塔・西塔・横川ら満山の仏法守護の諸仏・菩薩、薬師如来の十二の誓願、医王善逝、薬師如来の脇の日光菩薩・月光菩薩、無二の丹誠を照らし、唯一の神仏の感応を垂れ給え。しかればすぐに、邪謀残害の者どもは、首(こうべ)を都にさらすでしょう。

 ここに、一門の公卿ら、異口同音に礼を尽くし、祈誓することくだんのごとし。

平通盛(従三位行 兼 越前守)
平資盛(従三位行 兼 右近衛中将)
平維盛(正三位行左近衛権中将 兼 伊予守)
平重衡(正三位行左近衛中将 兼 播磨守)
平清宗(正三位行右衛門督 兼 近江守)
平経盛(参議正三位皇太后宮大夫 兼 修理大夫加賀越中守)
平知盛(従二位行中納言 兼 左兵衛督征夷大将軍)
平教盛(従二位権中納言 兼 肥前守)
平頼盛(正二位行兼大納言 兼 出羽陸奥按察使)
平宗盛(従一位)

寿永2年(1183年)7月5日

 平家の連名願書を読んだ天台座主・明雲は、これを憐れみ、すぐに衆徒に見せることはしないで、山王七社の中の一つ・十禅寺権現の社壇に納め、三日間、仏力で祈る呪法を加え、そののちに衆徒に披露しました。その際、最初に見たときには書かれていなかった歌が一首、願書の表紙に記されていました。

  平かに花咲く宿も年ふれば

    西へ傾く月とこそ見れ

 平家が西海に沈むことを暗示しており、日吉山王権現が平家を憐れみ、3000の衆徒に平家に力を貸せと伝えていました。しかし、平家の日ごろの振る舞いは神慮を欠き、祈れどもかなわず、語らえども、なびきません。大衆も、日吉山王権現がそこまでいうならばと平家の現状を憐れみましたが、すでに源氏に同心する旨の返牒を送っている以上は、今また軽々しく翻すこともできず、平家の願書を受け入れる大衆はいませんでした。

(2011年12月28日)


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