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ミニシアター通信平家物語 > (181)富士川の合戦:平忠清

(181)富士川の合戦:平忠清

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登場人物:平維盛、平忠度、平忠清

 平家の軍勢は、それぞれ都を出て、千里の東海へ出征しました。平穏無事に戻ることはあやうき様子。ある者は野の露に宿をとり、別の者は高い峯の苔の上に旅寝をし、平家の軍勢は、山を越え、河を渡り、日数をへて、10月16日には、駿河の国・清見が関(静岡県清水市から富士市周辺)に到着しました。

 都を3万騎で出たのですが、道中でその土地の兵たちが加わり、7万騎といわました。前陣は、蒲原・富士川に進み、後陣はいまだ手越(てごし)、宇津の谷でした。

 大将軍の平維盛は、侍大将の平忠清を呼び、「私の考えとしては、足柄山を越え、広い土地に出て戦(いくさ)をしたい」と勇みました。

 しかし、平忠清が進言しました。

「福原を出るときの平清盛殿の仰せでは、戦場でのことは忠清に任せるとのこと。伊豆、駿河の勢が合流することになっているが、いまだ一騎も来ていない。味方は7万騎と言えども、国々から駆り集めた軍勢、馬も、兵も皆、疲れ果てています。東国は、草も、木も皆、源頼朝に従いついていますので、敵は何十万騎になるかわかりません。今はただ、富士川を臨み、味方の軍勢が合流するのを待つべきだと思われます」

 平忠清からそう言われ、平維盛は力及ばす、忠清の言葉に従うことにしました。

 いっぽう、源頼朝は鎌倉を発ち足柄山を越え、沼津から三島へ行く道中の宿場・黄瀬川に着きました。甲斐や信濃の源氏たちが合流し、駿河の国・浮島が原(吉原市と沼津市の中間で、富士沼周辺)で勢揃いしました。その数、都合20万騎と記されました。

 その中から、常陸源氏の佐竹四郎の手の者が文を持って京へ出発しました。しかし、平家の侍大将・平忠清の手の者に奪われました。ただ、手紙を見ると女房へ宛てた者でしたので、「問題ないだろう」と通してやりました。その際、「源氏の勢力はどのくらいだ」と尋ねると、「自分のようないやしい者は4、5百千まではものの数を知っていますが、それより上は知りません。多きやら、少なきやら。およそ、7日、8日の間ははたと並び続き、野も、山も、海も、河も皆、武者で満ちています。昨日、黄瀬川で、ある人が言ったことには、『源氏の御勢20万騎』とか」と口にしました。

 平忠清は、「なんともくやしいことだ。都の大将軍・平宗盛殿がのんびりしていて機を失った。なんとも、口惜しい。もう一日でも先に討手を出していたら、大庭影義・影親兄弟、畠山重忠などの畠山一族はどうして我が方に参陣しないことがあろうか。大庭・畠山さえ来れば、伊豆・駿河の勢力はみな平家についたものを」。

 平忠清は悔しがりましたが、くやしがっても甲斐はありませんでした。

(2011年12月11日)


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