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(176)文覚の流され

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登場人物:文覚、安藤右宗、平資行

 文覚の乱入で院中は大騒ぎとなりました。ここに、信濃の国の住人・安藤右宗(みぎむね)という者がいて、その時は院中を警備する武者どころの武士でしたが、「何者ぞ」と言って、太刀を抜いて走り出ました。

 文覚はよろこんで飛び掛かりました。しかし、安藤右宗は、斬っては悪いと思ったのか、太刀を持ち直し、文覚が刀を持った右手の肘を強く打ちました。文覚がひるむと、「えたりや、おう(やっつけたぞ)」と声をあげて、太刀を捨てて組みつきました。

 文覚は、下になりましたが、安藤右宗の右の肘を強く突きました。安藤右宗は突かれながらも、締め付けました。たがいに劣らぬ怪力どうし、上になり、下になり、転げ回っていましたが、上から下から、したり顔で、暴れまわる文覚の手足を縛ってしまいました。

 文覚は門の外に出され、検非違使の下級役人に引き渡されました。

 文覚はひったてられながら、後白河法皇の御所の方をにらみ、大音声をあげ、叫びました。

「たとえ奉加をしないといえども、あまつさえ、文覚をこれ程まで、辛い目に遭わせて、ただ今にも思い知らせてやるぞ。

 三界は皆火宅なり(この世は煩悩に満ちている)。御所といえども、どうしてその難を逃れられようか。たとえ生前に帝位をほこったとしても、冥途の旅に出たのちは、地獄の獄卒・牛頭馬頭(ごづめづ)の責めを逃れることはできないぞ」

 文覚は、踊りあがり、踊りあがりしながら、叫びました。

 文覚は、「この法師は奇怪だ。禁獄せよ」と、押し込められました。

 平資行は烏帽子を打ち落とされた恥ずかしさに、しばらくは出仕しませんでした。安藤右宗は、文覚に組み付いた勧賞に、武者どころの首席を経ずに、直ちに、右馬允(うまのじょう)に昇進しました。

 その後、鳥羽天皇皇后・美福門院得子の死の大赦があったので、文覚はほどなく赦されました。

 文覚はしばらくはどこかで行に籠ったりすべきところ、再び勧進帳を引っ提げ、ほうぼうの施主に寄進を勧めて歩きました。このようなことの後なのに、「あはれこの世は乱れ、君も、臣も、共に滅び失せるぞ」などと恐ろしいことを言って回ったので、「この法師を都に置いてはどうにもならない。遠流せよ」と、伊豆の国へ流されました。

(2011年12月11日)


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