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(175)文覚の立ち回り

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登場人物:文覚

 その時、後白河法皇の御前では、妙音院の太政大臣・藤原師長が琵琶を奏で、和漢朗詠集などの詩歌を朗詠していました。按察大納言・資賢は6絃(げん)の和琴を鳴らし、資賢の子息・右馬頭の資時が、風俗歌、催馬楽(さいばら)を歌いました。また、四位の侍従・盛定が拍子を取って、今様をとりどりに歌っていました。院中にさざめき渡り、まことにおもしろい御遊となり、後白河法皇も上の句を受けて、下の句を続けたりしていました。

 そこに文覚が大音声をあげて入ってきたので、御遊の調子も狂い、皆、拍子も乱れました。「御遊の折節であるのに、何者だ。狼藉だ。そっ首を突いてしまえ」との仰せが出るか出ないかのうちに、院の中の、血気盛んな男たちがわれ先にと進み出ました。

 男たちの中から、判官の平資行が進み出て、「御遊の折節であるのに何者だ。狼藉だ。とっとと出ていけ」と言いました。

 文覚は、「高雄の神護寺へ荘園を一か所、寄進しない限りは、ぜったいに出ていかない」と言って動きません。

 平資行が近寄って首を突こうとすると、文覚は勧進帳を持ち直し、資行の烏帽子をはたと打って打ち落とし、拳を強く握り、胸をばくと突いて、資行を仰向けに突き倒しました。資行は、烏帽子を打ち落とされて、おめおめと大床の上に逃げ上りました。

 その後、文覚は、懐から馬の尾で柄を巻いた、氷のような刀を抜いて持ち、近寄る者を突かんばかりに構えました。文覚は左手に勧進帳、右手に刀を持ち、立ち回ったので、思いもかけないことで、左右の手に刀を持ったように見えたということです。

 公卿も、殿上人も、これはいかなることだ、と騒ぎ、御遊もすでに荒れてしまいました。院の中は大騒動です。

(2011年12月11日)


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