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ミニシアター通信平家物語 > (162)待宵の小侍従、物かはの蔵人

(162)待宵の小侍従、物かはの蔵人

参照回数:

登場人物:徳大寺実定、藤原多子、待宵の小侍従、藤原経尹

 また、石清水八幡宮の別当・光清法印の娘で「待宵の小侍従」という女房も、大宮・藤原多子の御所にいました。

 そもそもこの女房を「待宵」と呼ぶのは、あるとき、藤原多子の御前で、「待つ宵と、帰る朝(あした)で、どちらが哀れがまさっているだろう」と聞かれ、待宵の小侍従が、

  待つ宵の更(ふ)け行く鐘の声聞けば

    帰る朝(あした)の鳥はものかは

 と答えたことによります。

 徳大寺実定は、待宵の小侍従を呼び出し、今昔の話をしてのち、小夜もふけていったので、古き都の荒れ行くさまを今様に詠いました。

  古き都を来て見れば 浅茅が原とぞ荒れにける

  月の光は隈なくて 秋風のみぞ身にはしむ

 徳大寺実定は、繰り返し3回、歌いました。藤原多子をはじめ、御所の中の女房たちは皆、袖を濡らしました。

 そうしているうちに夜も明けていったので、徳大寺実定はいとまごいをしつつ、福原への帰路につきました。

 徳大寺実定は、供にしていた蔵人・藤原経尹を呼び、「待宵の小侍従は何と思っていたのだろうか。余りに名残惜しく見えたので、お前は帰って、申し伝えよ」と命じました。

 藤原経尹は、藤原多子の御所に走り帰り、畏まって、「これは大将殿・徳大寺実定が申せといったことです」と伝え、

  物かはと君が云ひけむ鳥の音の今朝しもなどか悲しかるらむ

 待宵の小侍従は、

  待たばこそ更(ふ)け行く鐘もつらからめ帰る朝(あした)の鳥の音ぞうき

 と詠みました。

 蔵人・藤原経尹は走り帰って、待宵の小侍従の歌を、徳大寺実定に伝えました。徳大寺実定は、「だからこそ、お前を遣わしたのだ」と、大いに感心しました。それから、蔵人・藤原経尹は「物かはの蔵人」と呼ばれるようになりました。

(2011年12月2日)


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