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ミニシアター通信平家物語 > (134)三井寺勢の夜討ち

(134)三井寺勢の夜討ち

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 三井寺では、以仁親王が来てから、逢坂から大津に越える道や、四宮から三井寺へ続く道などに、堀を作り、楯を並べ、とげのある木などをつけた逆茂木で防御を固めていました。

 いざ出発ということになったので、堀に橋を渡し、逆茂木を取り除くなどしているうちに、時間が進み、関のニワトリが鳴きました。

 源仲綱は、「今、ニワトリが鳴いているので、六波羅へ到着するのは昼だろう。どうしたものか」と心配しました。

 円満院の大輔・源覚が、前と同じように再び進み出て、言いました。

「昔、秦の昭王が斉の王族田文・猛嘗君を捕まえたとき、猛嘗君は后の助けで兵3000人を引き連れて逃げ延びた。ほどなくして、函谷関に到着した。

 中国の習いに、ニワトリが鳴かない限りは関の戸を開けてはならないとある。

 かの猛嘗君の3000人の兵の中に、田甲というものがいた。ニワトリの鳴きまねが上手で、鶏鳴(けいめい)とも言われた。

 その田甲が高い場所に走り登って、ニワトリの鳴きまねをゆうぜんとやってのけると、関の路のニワトリが聞きつけて、ニワトリどもが皆、鳴き合った。

 関守は、鳥のそら音にばかされて、関の戸を開けて、猛嘗君たちを通した。

 なので、今のニワトリの声も敵のはかりごとだろう。ただ、進むべし」

 このようにしている程に、五月の短夜でしたので、ぼんやりと明けてきました。

 仲綱は、「夜討ちでこそ勝機があると思っていたのだが、昼のいくさとなってしまえば、いかにも、平家にはかなわない。呼び戻せ」と命じ、大手は松坂から取って返し、搦め手は如意が嶺から引き前しました。

 三井寺の若者、大衆、悪僧たちは、「これは一如房の長詮議のため、夜が明けてしまった。やつの宿坊をたたき壊せ」と、一如房に押し寄せ、さんざんに破壊しました。一如房では防御にあたった弟子、同宿者たちが皆、討たれました。

 一如房も傷を負い、ほうほうのていで六波羅にたどり着き、三井寺挙兵を伝えましたが、六波羅ではすでに数万騎が馳せ集まっていて、少しも騒ぐ気配がありませんでした。

(2011年11月24日)


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