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(125)競の計略

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 日もようやく暮れ、平宗盛が出てきました。競(きおう)がかしこまって告げました。

「まことか、三位入道・源頼政は、園城寺三井寺に入ったといいます。定めて夜討ちの手などを差し向けられることでしょうが、頼政の一族、渡辺党、はては、三井寺の法師たちが待ち受けているでしょう。しかし、私の敵ではありません。真正面から選り討ちしてやります。しかるべきよい馬に乗って参上したいと思いますが、この程、親しい奴に馬を盗まれてしまいました。馬を一匹、貸していただけないでしょうか」

 宗盛は、白毛に黒や茶色が混ざった馬で特に白が強い「白葦毛」の馬で、秘蔵の「煖廷(なんりょう、南鐐=良質の銀の当て字)」に良い鞍を置いて、競に与えました。

 競は、「煖廷」を賜って屋敷に帰りました。競は、「はやく日が暮れないだろうか。三井寺へ馳せ参じて、頼政殿の真っ先に駆けて討ち死にせん」と言いました。

 日がようやく暮れると、競は、妻子たちをここかしこに隠し、三井寺へ出発しました。その心の内こそ、悲痛。競の出で立ちは、種々の色で染めた「狂紋」の狩衣で大きな菊の花のようにおし平めたふさがあるもの、先祖代々の着背長(きせなが)、あかい色の糸でおどした「緋縅(ひおどし)の鎧」、甲の星(鋲の頭)に銀をかぶせた甲の緒を締め、いかめしく作った大太刀を差し、(上下が白く中程が黒い)羽ではいだ24本の大中黒の矢を背負い、滝口の武士の作法を忘れじということでしょうか、鷹の羽ではいだ的を射るための矢を1手、箙に差し添えています。

 競は、滋藤の弓を持ち、「煖廷」に乗り、乗り換え用の副馬に乗った従者を一人従え、馬の口を取る舎人の脇に矢を防ぐための楯を挟ませ、屋敷に火を掛けて、三井寺へ向かいました。

 六波羅では、競の屋敷から火が出たというので、宗盛が急ぎ出てきて、「競はいるか」と言うと、「いません」という返事。宗盛は「すわ、奴めに心をゆるし、だまされた。競を追いかけて討て」と命じました。しかし、競は、大力の剛の者で、矢の早打ちの手練れでしたので、「24本も矢を差しているので、まず、24人が討たれる。静かにしていよう」と、進み出る者はいませんでした。

(2011年11月20日)


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