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ミニシアター通信平家物語 > (123)重盛の優雅、宗盛の奇行

(123)重盛の優雅、宗盛の奇行

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 平宗盛の奇行を見るにつけても、天下の人々は、小松大臣・平重盛をしのびました。

 ある時のこと、重盛が参内したついでに中宮の御所へ参上しました。その際、8尺(約2.4メートル)程の蛇が、重盛の指貫袴の左の裾のへりをはっていました。重盛は、自分が騒げば女房たちも騒ぎ、中宮も驚くだろうと思いました。左手で蛇の尾を取り、右手で蛇の頭を押さえ、直衣の袖の中に引き入れました。

 重盛は少しも騒がず、凛と立ち、「「6位の蔵人はいるか、6位の蔵人はいるか」と呼びました。

 すると、伊豆の守・源仲綱が、そのときはまだ六衛府の武官の蔵人でしたが、「仲綱がおります」と名乗って重盛の御前に来ました。重盛は蛇を仲綱に渡しました。

 仲綱は、校書殿である「弓場殿」を過ぎ、殿上の小板敷の南庭に出ました。常に校書殿にいて鈴で呼び出しがあれば殿上の間で殿上人から下知を受ける「御倉の小舎人」を招き、「これを渡す」と言いました。小舎人は、頭を振って逃げました。

 仲綱はこれでは仕方ないと、自分の郎党の競(きおう)を呼んで、蛇を渡しました。競は、蛇を捨てました。

 翌日、重盛は「それにしても、昨日の振る舞いは、優雅でしなやかであった。これは乗り心地が一番の馬だ。衛門府の詰所から遊女のもとへ通うときに使え」と、仲綱のもとに鞍をつけた良馬を遣わしました。

 仲綱は、重盛への返事として、「御馬、かしこまっていただきます。それにしても、昨日の振る舞いは、舞楽の名曲で西域の人が蛇を見て楽しみ木製の蛇を小道具に使うという『還城楽』に似ていました」と言いました。

 重盛はいかなるときも、このように優雅に振る舞いました。それなのに、この宗盛ときたら、兄のような振る舞いもなく、人の惜しむ馬を奪い取り、あまつさえ、天下に大事を起こすに及ぶとは、情けないことです。

(2011年11月20日)


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