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ミニシアター通信平家物語 > (104)鳥羽殿の後白河法皇

(104)鳥羽殿の後白河法皇

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 同じく、治承3年(1179年)11月の21日、天台座主の覚快法親王がしきりに辞退するので、前天台座主・明雲大僧正が、再び、天台座主になりました。

 このようにやりたい放題をした平清盛でしたが、中宮・建礼門院は娘、関白・藤原基通は娘婿なので、何事につけても安心したのか、「政務の一切は主上の御計らいであるべきだ」と、福原へ帰ってしまいました。

 同じく23日、前右大将・平宗盛が急ぎ参内し、清盛の言葉を高倉天皇に伝えました。高倉天皇は、「後白河法皇から譲り受けた世なら別ですが、今は政務をしたくない。何事も関白・藤原基通と相談して、宗盛のよきようにはからえ」と、清盛の言葉を受け入れませんでした。

 後白河法皇は鳥羽離宮で、冬も半ばを越しました。嵐の音だけが激しく、寒い庭に月だけが冴えています。庭には雪が降り積もりますが、足跡を踏みつける人もいません。池には氷が何重にもはり、群れをなしていた鳥もいなくなってしまいました。

 鳥羽離宮に近い勝光明院の鐘の音は、遺愛寺の鐘の音かと思われます。西山の雪の色は、香炉峯の風景を連想させます。霜に寒い夜、砧の響きがわずかに枕元まで伝ってきて、暁にかけては、氷を割って走った車の跡が門前からはるかに続いています。巷を行き交う人や馬の忙しげな様子や、憂き世を渡る有様を、後白河法皇はあわれに思いました。

 宮門を守る者が夜警、昼警を勤める様子にも、「どのような前世の契りによって、今、縁を結んでいるのだろう」と言ったことこそ、かたじけないです。

 後白河法皇は、およそ物に触れ、ことに当たり、何事につけても心を痛めました。そのような様子で、昔の御遊覧、あちこちへと足を運んだ参詣、祝賀などの目出度い行事などを思い出し続けて、懐古の涙を流しました。

 古い年が去り、新しい年が来ました。治承も4年(1180年)になりました。

(2011年11月10日)


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