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動物農場/ジョージ・オーウェルのあらすじと読書感想文

2004年7月1日 竹内みちまろ 参照回数:


 「動物農場(Animal Farm/ジョージ・オーウェル/高畠文夫訳)」は、社会主義の皮をかぶったファシズムの欺瞞を問いただす作品です。自分たちだけの王国をつくろうと動物たちが農場から人間を追放する物語です。人間を追放したあとの動物農場は、理想郷にはならずに、狡猾な一部の動物による独裁のもとでファシズム国家となっていきます。独裁者である豚は、自分の利益のために次々と理想をねじ曲げます。そのときの言い草は、実にこっけいです。しかし、そのような独裁者の主張がことごとくまかり通ります。主張がまかり通る理由は他の動物たちの無知だったり、私兵による恫喝だったりします。独裁者の言い草が描写されるたびに、独裁者の貪欲さと狡猾さが浮き彫りになります。同時に、独裁を許容してしまう他の動物たちの愚かさと無力さが浮き彫りになります。独裁者である豚の言い草もこっけいですが、それを受け入れてしまう他の動物たちの姿もこっけいです。繰り返される描写は、次々と笑いを誘います。しかし、現実世界に目を向けたときに、ユーモアでは済まなくなります。

 「動物農場」は、動物たちが預言者である豚の「人間を追放した後も、彼らの悪習に染まってはならない」という演説を聴く場面からはじまります。そして、動物たちが独裁者である豚の人間の悪習に染まった姿を垣間見る場面で終わります。前者の豚はレーニンを、後者の豚はスターリンを思わせます。また、独裁者のライバルである豚は、トロツキーと同じように農場から追放されます。架空の世界の出来事をユーモアを交えて描写することにより、現実世界で起きている社会主義の皮を被ったファシズムの欺瞞を痛烈に風刺しています。

 「動物農場」の著者のジョージ・オーウェルは、従軍記者としてスペイン戦争に参加しました。のちに実際に銃を取りました。しかし、ヘミングウェイやキャパが取材をしたコミンテルンの支配下にあった「国際旅団」ではなくて、アナーキストの流れを組む勢力に参加したようです。スペイン共和国の上層部では、スターリン主義者を軸に官僚的なはげしい内ゲバが繰り返されていました。ジョージ・オーウェルも、主流派からトロツキストの烙印を押され逮捕されかけたようです。言うまでもありませんが、逮捕の後は粛清となります。スペインで、スターリン主義者を中心とした組織にはびこる欺瞞を目の当たりにしたことが、「動物農場」を書き残すエモーションとなったのでしょうか。


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