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陽だまりの彼女/越谷オサムのあらすじと読書感想文

2012年12月27日 竹内みちまろ 参照回数:

陽だまりの彼女のあらすじ(ネタバレあり)


 広告代理店で営業をする入社2年目の「僕」こと奥田浩介は、商談に訪れた取引先の下着メーカーで、中学校時代のクラスメイト・渡会真緒に再会しました。中学生だった真緒は、分数の割り算ができませんでしたが、いじめに遭う真緒を浩介がかばったことをキッカケにして、真緒は浩介につきまとうようになっていました。真緒と同じくクラスから浮いてしまった中学生の浩介は、放課後、真緒に勉強を教え、奥まった場所にある銀杏公園で、何時間も真緒と語らい、キスをしました。しかし、思春期特有のすねた心を持っていた浩介は、気持ちに素直になれず、真緒につれなくあたります。しかし、真緒は、浩介が3年生の1学期いっぱいで転校するまで、浩介について歩きました。10年後、受験浪人をしないで有名大学に合格していた社会人3年目の真緒は、肩まで髪の毛を伸ばし、しゃれた指輪をはめ、商談ルームでさっそうとトークをリードしていました。「学年有数のバカ」だった15歳の真緒が、25歳の大人の女性に変身していたことに、僕はうろたえます。

 真緒は、里子で、13歳の時に裸で外をうろついていた時、警察官に保護された少女でした。子どもがいなかったそのときの警察官の夫婦と養子縁組をして育てられました。真緒には、保護されるまでの記憶がありませんでした。中学校では、真緒は、裸で外を歩き回ると噂されますが、真緒は、どんなにバカにされても、必死に漢字書き取り帳を埋め、授業が終わってもノートを取り続けます。いじわるをされて黒板を消されると、浩介のそばに来て、ノート見せてと言いました。

 そんな真緒と浩介のファースト・キスは、真緒が漢字のテストで満点を取った日でした。真緒は、答案用紙を丁寧に開き、「お父さんとお母さん、これ見たらびっくりするよ。泣いちゃうかも」と笑顔を浮かべます。中学生だった浩介へ、「ありがとう」と声を掛けます。「何が?」と問うと、「私にかまってくれて」と告げます。浩介は、経験したことのないほてりを感じ、気が付いたら、真緒にキスをしていました。

 大人になって再会した僕は、真緒をデートに誘います。真緒は、自分で言ったことをすぐに忘れる癖や、映画にしようと言っておきながら次の瞬間にはテーマパークにしようと言い始める気分屋なところや、執念深いところなどは昔のままでしたが、僕はデートを終えて電車を降りようとする真緒の腕をつかみ、降ろしませんでした。真緒は僕のアパートに泊まり、将来を誓い合います。

 しかし、真緒の家へあいさつに行くと、真緒の父親から、「真緒と付き合うのはもう少し考えてからでもいいのでは」「真緒のその、事情についてはどのくらい知っているのかな」などと渋い答えしか返って来ません。僕はそこで初めて、真緒が生まれてから保護されるまでの記憶を持たないことを知ります。ただ、僕の気持ちに変わりはありませんでした。真緒が「ねえ、わかってくれるでしょ。心配しなくていいんだから」と説得しますが、父親は「他人様(ひとさま)に迷惑はかけられないよ」と静かに答えます。真緒は、「交渉決裂、ってことだね」「私は、誰が反対しても浩介と一緒だから」と家を出ました。

 2人は、真緒の両親から歓迎されないまま、婚姻届を提出し、アパートを借りて住み始めました。真緒が真緒の父親に電話をし、「『夫』から挨拶がありますので」と電話機を渡されると、冷静な声で、「本当に、真緒でいいのかい?」「もし、何か困ったことがあったら相談に来なさい。それから、真緒が君に迷惑をかけると思うけど、許してやってくれるかな?」などと告げてきました。

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陽だまりの彼女の読書感想文(ネタバレあり)


 『陽だまりの彼女』は、読み終えて、胸が、きゅるるんとしました。何より、真緒がかわいい!

 好きな場面は、たくさんあります。まず、中学生の時、引っ越しの前日に、顔をくしゃくしゃにして浩介の家に来て、玄関先で立ちつくす真緒がよかった。また、2人で借りた部屋の窓辺の陽だまりに寝ころんで、掃除機かけたいという僕に、「んー、動くのめんどくさい。前みたいにお姫様だっこで運んで」と甘える真緒や、お姫様だっこでベッドで降ろしてもらっても浩介の首に巻いた腕を解かずにおしゃべりを続ける真緒もすてきです。同時に、「そう来るなら実力で黙らせてやる」と唇をふさぐ浩介も幸せそう。上司から「あれはやった? 裸エプロン」とちゃかされながら、「やるわけないですよ」と答えつつも、「じつは、やった」と心の中でつぶやく浩介もいい味を出しています。「仮に太ったとして、それは何太りっていうのですか?」と期待たっぷりに首をかしげ、「……えーと、幸せ太りです」と僕が答えると、「えへへへへ」とくすぐったそうに笑う真緒の姿は目に浮かぶようでした。

 でも、一番好きなのは、僕が結婚指輪を渡す場面でした。僕はしゃれた演出をしてベランダに結婚指輪を置いておきましたが、それを見つけた真緒が猛スピードで飛びついてきます。真緒の興奮は冷めやらず、2人でごはんを食べながらも、「うひゃひゃひゃひゃ」と笑い、ベッドに入っても、足をばたつかせながら「ぐほほほほ」と笑います。それから、「演出がベタすぎ」などと批評をくわえながらも、僕の首もとに顔をうずめます。

 『陽だまりの彼女』の魅力は、若い2人が幸せになろうとする姿だと思いました。それも、自分ひとりの幸せや、自分ひとりの人生を考えるのではなく、僕も、真緒も、いつも、2人の幸せを考えます。確かに真緒には浩介へは話していない秘密があり、物語の結末はけっしてハッピーエンドとはいえないかもしれません。しかし、中学校の時に転校してそれっきりになってしまっていた恋人と、新社会人になって再会した若い2人が、手を取り合って、幸せになろうとする。それは、輝く時間ではないかと思いました。


→ いとみち/越谷オサムのあらすじと読書感想文


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