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「サマーウォーズ」のあらすじと読書感想文

2012年8月12日 竹内みちまろ 参照回数:

サマーウォーズのあらすじ(ネタバレ)


 久遠寺高校2年生の小磯健二(17)は、世界一になってあこがれの3年生・篠原夏希(18)と釣り合う男になると決意し、数学オリンピックに挑戦しました。しかし、最後の最後で集中力を欠き、日本代表を選考する予選大会で負けてしまいました。今は、物理部の部室で同級生の佐久間敬(17)といっしょにパソコンへ向かい、電子ネットワーク上の仮想現実世界「OZ」のシステムの保守点検と、宣伝用ビデオ作成のアルバイトをしています。OZは登録者が世界で10億人を越え、先進国の公共機関や、コンピューターを使う施設はほぼ全てが利用し、OZの中で「アバター」と呼ばれる仮想キャラクターを戦わせることはもはやスポーツと認識されつつあり、多くの人がメールや通話にもOZを利用していました。

 健二は、突然、物理部の部室にやってきた夏希から、アルバイトをしない? と言われます。内容をろくに聞かず、長野県上田市にある夏希の実家にやってきた健二でしたが、アルバイトは、90歳の誕生日を迎える夏希の曾祖母・陣内栄を安心させるため、4日間だけ夏希の婚約者のふりをするというものでした。栄は、戦国時代から続く名家の当主で、夏希は嫡流の一人娘。しかし、陣内家の屋敷に到着した最初の夜、健二に謎のメールが届き、健二が2056桁の暗号を解読してしまったことにより、翌朝、健二の顔写真が、OZを大混乱に陥れた重要参考人として、テレビに映っていました。偽物の婚約者であることがバレてしまいますが、世界中が大混乱に。

 OZを混乱に陥れた元凶であるラブマシーンという仮想キャラクターを生み出したAIは、夏希がなついていた親族の一人・陣内侘助が作りだしたものだと判明しました。しかし、ラブマシーンは暴走を続け、OZによって混乱に陥りやがては破壊されてしまう現実の世界を守るため、ラブマシーンと、夏希の13歳の従弟・池沢佳主馬(かずま)が操作する仮想キャラクターのキング・カズマがバトルを繰り広げます。また、AIの行動形態を逆手にとって、夏希が、仮想空間で、ラブマシーンとHANAFUDA(花札)で勝負をしたりします。小惑星探査機「あらわし」が原子力発電所に落下するまでの時間が2時間と判明した場面では、みんながあきらめる中、健二が「数学オリンピックで経験したシビアなタイム制限に比べたら――永遠に近い時間だ」と、危機に立ち向かいました。

 ラブマシーンの騒動が終わったあと、健二は、警察へ出頭します。任意の事情徴収とのことでしたが、夏希には、「かっ、帰ってきたら! お話したいことがあるんですけど! いいでしょうか!」と言い残し、夏希は、「は、はい……待ってます」と答えました。

サマーウォーズの読書感想文


 映画を見ずに、また、何の予備知識もないままに、『サマーウォーズ』を読みました。読み終えてからはじめて、大森望さんの「解説」を読み、そこで、映画のノベライズであることを知りました。同時に、細田守監督によるアニメ映画『時をかける少女』が、「実質的には、筒井康隆の同名原作からタイトルだけを借りたオリジナル・ストーリー」であることも知りました。アニメをぜんぜん見ないのですが、1983年の原田知世の『時をかける少女』は見ています。

 前置きが長くなりました。まず、読み終えて、映画『サマーウォーズ』の視覚世界はどんなイメージなのだろうと思いました。本書を一読した限りでは、情報を整理し、ストーリーを追い、キャラクターを把握するだけで精いっぱいというのが本音でした。おまけに、映画を見ていませんし、映画が先にありそれのノベライズだと知らなかったので、ときおり頭の中に「絵」を思い浮かべても、それは当然、読者である私の頭の中にある勝手なイメージや、好みや、知識に固有なイメージとなります。小説『サマーウォーズ』の内容は、未来世界っぽく、またタイトルに「ウォーズ(戦争)」とあり、おまけに、戦国時代の徳川軍との合戦がどうのこうのと出てきましたので、自分の中に浮かんだイメージは、時代劇風で、かつ、近未来的な映像イメージでした。ただ、読み終わってから、インターネットでアニメ映画の場面写真を見たら、宮崎駿風の田舎のほのぼのとした風景で、驚きました。本書は、まず先に映画ありきの小説だと思いますので、筆者の裁量で読者の自由なイメージを喚起したり、筆者が方向付けたいイメージへ誘導したりすることは求められていなかったのかもしれません。あらためて、絵/映像/イメージと、文字というものの関係を考えさせられました。

 ストーリーとしては、やはり、いつくかの落としどころ(ラブマシーンが人々から奪おうとしているものが、小さいころから妾の子と蔑まれ、さみしい思いをし、10歳で母を亡くした侘助が心の底でほしいと願っていたもの/両親が不仲な家庭の文系の少年が、剣道部で生徒会長で学園のアイドル的存在ですが、実は「女の子はちょっとくらいワガママなほうが好かれるって雑誌に書いてあったし」などと自分に言い聞かせるほど恋に奥手な少女と恋をする/仮装キャラクターである「アバター」であっても、「かけがえのない大切な人を守りたいと願う、ごく普通の家族たち」の意志が伝わってくる、など)に、ほろりと来ました。

 親戚一同が勢揃いした食卓の場面もよかったです。栄の遺書にあった「家族同士、手を離さぬように。もし辛い時や苦しい時があっても、いつもと変わらず、家族みんなそろってご飯を食べること。一番いけないのはお腹が空いていることと、一人でいることなんだから」という言葉も心に響きました。バーチャル世界での出来事がメインの作品でしたが、描かれているのは、人間の心であり、現代人の心に響くように出来てるのだなと思いました。


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