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ハルチカシリーズ第1弾「退出ゲーム」/初野晴のあらすじと読書感想文

2016年4月30日 竹内みちまろ 参照回数:

ハルチカシリーズ第1弾「退出ゲーム」のあらすじ


 清水南高校の吹奏楽部に所属する、共に1年生の上条春太(ハルタ)と穂村千夏(チカ)は、小学校に入学するまで家が隣どおしで幼なじみ。高校に入学し、再会を果たした。

 ハルタは、背は低いものの、さらさらで艶のある髪の毛、中世的な顔立ち、引き締まった体、きめ細かい肌、通った鼻筋と長いまつ毛、二重まぶたなど、チカが切望するパーツをすべて兼ね備え、初対面の女の子をうっとりさせてしまうだけのルックスの持ち主。高校入学時にすでにホルン吹きとなっていた。

 チカは、中学時代をバレーボール部に捧げ、高校では女の子らしい部活に入ろうと決意し、おばあちゃんを説得してフルートを買ってもらい、密かに憧れていた吹奏楽部の門を叩いた。

 吹奏楽部はハルタやチカら新1年生を含めて部員9名。最盛期には部員が60名を超えたことがあったが、現在は、コンクール出場もままならないという廃部すれすれのどん底状態だ。

 吹奏楽部の顧問は、チカの10歳年上で26歳の新任教師・草壁信二郎。難しいことを言わずに生徒たちの目線に合わせて分かりやすい言葉で話し、部員たちから慕われている。だが、学生時代に東京国際音楽コンクール指揮部門で2位を受賞し国際的な指揮者として将来を嘱望されていながら海外留学から帰国後にそれまでの経歴をいっさい捨てて数年間姿を消したという過去と、左手に深い傷跡を持つ。

 草壁先生は吹奏楽部の顧問を快く引き受けてくれた。夏休みまでチカと吹奏楽部の部員集めに奔走した。チカは草壁先生に思いを寄せており、漫画を描くことが得意なペン画部の同級生・希(のぞみ)から、「……そんなに好きだったら思い切って告白すればいいのに」、「たぶんチカだったら楽勝だよ。可愛いし、スタイルだっていいし」などと声を掛けられるが、チカは「ライバルがいるもん」と裏返った声で告げ、そのライバルと、抜け駆けをしないという協定を結んでいることを告白。ハルタも草壁先生に純粋な恋心を抱いており、側で見ているチカがもだえそうになってしまうくらい、ハルタは草壁先生と一緒にいるときに胸をときめかせていた。

 夏休みが終わって、秋の文化祭のため、文化部から1名ずつ実行委員が選出された。

 文化祭の前に、掲示板に脅迫状が張り出された。脅迫状自体は3年連続3回目のことで、文字からあぶりだすと「マジック同好会よろしく」というメッセージが浮かびあがるというものだった。しかし、科学部が展示予定だった硫酸銅の結晶が理科室から、監視の生徒が目を離した5分ほどの間に盗まれるという事件が発生した。

 「まんが甲子園」に出場したペン画部や、日本学生科学賞で中央審査まで進んだ生物部などはまだよかったものの、公式に参加できる大会を見つけられない文化部にとって、文化祭は、予算の獲得に大きな影響を及ぼす唯一の活動発表の機会だった。部員の減少やひと学年丸ごと部員がゼロなどの状況を抱えている部は文化祭がなくなると廃部になる恐れがあり、盗まれた硫酸銅が劇薬であるにもかかわらず、先生に報告して警察に連絡してもらうことに反対した。

 実行委員だったチカから泣きつかれ、ハルタが事件を解決し、なぜか、チカが事件解決の最大の功労者ということになった。

 文化祭の余韻からさめた11月には、ハルタは、同級生の成島美代子から6面全部が白色のルービックキューブを完成させるという難題を突きつけられた。

 美代子は全国的なオーボエ奏者で、中学3年生のときに、美代子も部員だった中学校がわずか23名という異例の少人数で全日本吹奏楽コンクールの中学の部の全国大会で銀賞を獲得していた。ハルタは、中学と高校の部の全国大会が開催される普門館(東京・杉並区)で美代子たちの中学校が初出場で快挙を成し遂げる様子を目の当たりにしていた。

 ハルタは真剣に普門館を目指していた。ルービックキューブを完成させ、美代子を吹奏楽部に迎え入れた。

 続いてハルタは、演劇部の幽霊部員となっていた中国系アメリカ人で、サックス奏者のマレン・セイ(1年生)を、演劇部と吹奏楽部の「退出ゲーム」と呼ばれる寸劇対決の末に、吹奏楽部に迎え入れた。

 さらにハルタは、発明部の萩本肇(2年生)と萩本卓(1年生の)兄弟が起こした問題を解決する過程で、学校にフライングでやってきた4月に清水南高校に入学する楽器ケースを抱えた中学3年生の後藤朱里と出会った。

 こうして、ハルタとチカと仲間たちの1年間が終わった。

ハルチカシリーズ第1弾「退出ゲーム」の読書感想文(ネタバレ)


 ハルチカシリーズはまだまだ続きますが、ここでいったん、感想をメモしておきたいと思います。

 シリーズ第1弾「退出ゲーム」の登場人物たちが輝いているのは、目的があってそれに向かって仲間たちと邁進しているからだと思いました。

 ハルタは美代子を吹奏楽部に誘いました。結果として、ルービックキューブの難題を突きつけられましたが勧誘に成功します。続いてマレンも、「退出ゲーム」を戦う羽目になりますが、吹奏楽部に迎え入れます。

 ルービックキューブを解くという事件も、ステージに立って「退出ゲーム」を行うという事件も、ハルタの普門館へ行きたいという願いが生み出したエピソードでした。

 願いを持ち、願いを叶えるために行動することによって、様々な事件が起きて、その結果、人が繋がって、思いが積み重なっていくのだと思いました。

 もし、ハルタが普門館ではなくて、野球の甲子園などの別の目標を持っていたら、その時はまた、違った人たちと仲間になり、違った事件が起きていくのだと思います。どちらがよいのかではなく、ハルタが違った道を歩んでいても、違ったワクワクがあるのだろうと思います。

 何かを願い、目的を持ち、それに向かって邁進することがワクワクを生み、そして、ドキドキを生むのかもしれません。

 吹奏楽部のメンバーたちに加えて、演劇部の名越俊也や藤間弥生子、生徒会長の日野原秀一などのキャラクターたちが個性的で輝いているのも、それぞれの目的を持って活動しているからだと思います。

 また、ハルチカシリーズ第1弾「退出ゲーム」の読後感が優しいのは、ハルタが美代子やマレンなど問題を抱えているために目的のために邁進できない同級生たちの心を解きほぐし、美代子とマレンも、ハルタやチカと同じように、普門館へ向かって歩き出すからだと思いました。誰かを排除したり、何かを否定したりすることではなく、仲間を増やして輪を広げていく様子が、すがすがしかったです。

 これから、2年生になったハルタとチカにどんなドラマが待ち受けているのか楽しみです。続きを読みたいと思います。


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