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DIVE!!/森絵都のあらすじと読書感想文

2016年10月6日 竹内みちまろ 参照回数:

DIVE!!のあらすじ


 大手スポーツメーカー「ミズキ」が運営するミズキダイビングクラブ(MDC)は、元飛込み選手だった先代のミズキ会長が6年前に、日本の飛込み界の発展のために設立した。しかし、先代の会長はその年の1月、志半ばで死去。以降、赤字が続くMDCは、存続の危機がささやかれていた。

 MDCには、26人の小学生、7人の中学生、1人の高校生が所属している。年齢が高くなるにつれて減っていく会員数が飛込みを続けることの難しさを物語っていた。

 MDC唯一の高校生は、桜木高校1年の富士谷要一。3年連続の中学生チャンピオンで、既にインターハイの最有力選手と呼ばれている。元飛込み選手の両親を持ち、父親は、MDCのヘッドコーチでもある。

 中学生の坂井知季(ともき)は、去年の中学校選抜の関東大会で12人中10位という平凡以下の成績の選手。中学生のレイジと陵(りょう)も特別な成績は残していない。小6の幸也は、飛込みは向かないようで、シンクロ教室に通うママさんウォッチングに明け暮れていた。

 そんなMDCに、亡くなったミズキの元会長の孫で、アメリカで飛込みの指導者としての勉強と経験を積んだ帰国子女の麻木夏陽子が、コーチとしてやってきた。

 夏陽子が、MDC存続の条件としてミズキ側に認めさせたのは、翌年に開催されるシドニーオリンピックにMDCから日本代表選手を輩出することだった。

DIVE!!の読書感想文(ネタバレ)


 「DIVE!!」の本格的なストーリーはここまら始まり、夏陽子は、青森から元天才ダイバー・沖津白波の孫で、海でしか飛ばないと言われている・沖津飛沫をMDCに迎え入れたり、大きな大会を捨ててまで、日中合同合宿に、要一や知季を送り込んだりします。そして、要一、知季、飛沫の3人は、激しく、若い情熱を、「高さ10メートルからの飛翔」「時速60キロの急降下」「わずか1.4秒の空中演技」という飛込みに燃やし、オリンピックの選考会を兼ねた試合に臨んでいきますが、この辺りで、感想に移りたいと思います。

 「DIVE!!」は、読み終えて、飛込みという競技について、他のものを犠牲にして何かひとつの事に取り組むことについて、選手とコーチの出会いについて、選手同士の関係性について、ライバルの存在の大きさについてなど色々なことを考えました。が、今回は、要一をはじめとして選手たちが、スポーツとは直接関係のない思惑の中で、ときに憤り、ときに悔しがりながらも、それでも、ひた向きに飛込みに打ち込んでいたことについて、書いてみたいと思います。

 要一たちが打ち込んでいた飛込みでは、日本は、オリンピックでは3人の代表選手枠を持っていました。しかし、連盟は、日本人選手を2人だけオリンピックに送り出すことにしました。その理由は、絶対エースでありメダルへの期待を寄せる寺本の点数を下げないためでした。3人目の選手が国際大会でレベルの低い演技をすることで、ジャッジに「日本人の飛込みはレベルが低い」という印象を与えることを恐れたためです。連盟は、寺本1人をオリンピックに送ることも考えたようですが、日本人選手がもう1人いた方が寺本も精神的に安心することもあるかもしれいななどと考えました。要一の言葉を借りれば、もう1人の代表選手は「寺本さんの付き人」でした。

 しかし、日本が飛込みでメダルを獲得するためには寺本1人をオリンピックに送るべきだとの意見も出るほどに、日本の飛込み界が、オリンピックでのメダルを渇望していることも伝わってきました。

 ただ、理屈では分かっても、オリンピックを夢見ている選手たちには、代表枠が削られることは、とうてい納得ができることではないと思いました。しかし、選手たちはどうすることもできません。従うしかないというか、従うとか従わないとかいう次元ではなくて、選手個々の想いとは無縁のところで、オリンピックの代表選考をはじめとして、日本の飛込み界のことが決まっていました。

 選手は、それでも、飛込みを続けていくしかないのだなと思いました。

 もちろん、透明性や公平性というものはスポーツにおいては絶対に必要です。が、選手が正々堂々と実力だけで戦いたくても、そして何よりも当日のパフォーマンスだけを平等に評価してもらいたくても、それがされないこともあると思います。また、選手の想いがどうだという以前に、そもそも、その競技を取り巻く環境が、当日の結果とは無縁の場所で決まることもあると思います。「DIVE!!」でも、日本代表を選考するとうたった試合を開催する前から、日本代表が決まっているようなことがありました。

 でも、「DIVE!!」を読んで、そんな状況でも、嫌になってやめてしまったらそこで終わりで、どんなに厳しい環境でも、唇を噛み締めながら、目の前の試合に本気になって取り組んでいくことが大切なのだと感じました。さらに、そうすることでのみ自分が成長し、見ている人は見ているため、環境というものも変わるものだと思いました。

 「DIVE!!」を読み終えて、人間が本気になって何かに取り組んだとき、想いというものは伝わるのだと思いました。


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