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リズム/森絵都のあらすじと読書感想文

2016年9月25日 竹内みちまろ 参照回数:

リズムのあらすじ


 千葉の外れに住んでいる中学1年生の藤井さゆきは、夜中に両親の会話を聞いてしまい、家から走れば5分の場所にある従兄の高志と真ちゃんの家の両親が離婚しそうなことを知ってしまった。さゆきの父親と、真ちゃんたちの父親が兄弟だった。

 幼い頃は、さゆき、さゆきの姉、高志、真ちゃんは、よく4人で遊んでいた。今、高志は1人暮らしをしながら東京の大学に通っており、バンドをやっている真ちゃんは高校に行かず、隣町のガソリンスタンドで働いている。

 中学3年生の姉は、名門の私立中学に受験で入っており、高校入試を控えてピリピリしている。小学校からほとんどの児童がそのまま入学する若菜中学に入ったさゆきに、「さゆきもさ、真ちゃんみたいなのとばっかり遊んでないで、ちょっとは勉強もしなよ」などときつい口調で言い放つ。真ちゃんは、2年前のある日、突然、髪の毛を金髪に染めていた。

 離婚のことを耳にしてから、さゆきは、心配で学校でもぼんやりすることが多くなった。商店街で買い物をした帰りに、真ちゃんに会い、「おじちゃんとおばちゃん、元気?」と聞いたことから、真ちゃんに離婚のことを知っていることを見抜かれた。さゆきは「あたし、いやだな、そんなの」と告げたが、真ちゃんは「でもさ、おやじとおふくろがしょっちゅういがみあってるのも、なかなかいやなもんだぞ」と言われてしまった。

 夜、さゆきは真ちゃんからの電話で、真ちゃんが来月に1人暮らしをしている友達を頼って新宿に引っ越すことを聞いた。真ちゃんは「もっとなんかキラキラしたところで、歌、うたいたい……」と告げた。

 さゆきは、さゆきと同じクラスで真ちゃんとも仲の良いテツから、「真ちゃんのこと、引きとめたりしないよね」などと声を掛けられた。さゆきは、「真ちゃんはなによりも歌が好きで、あたしは歌の好きな真ちゃんがだれよりも好きなんだから」と自分に言い聞かせた。

 真ちゃんが新宿に行ってしまう前日の11月18日、さゆきは、真ちゃんにバイクで海に連れて行ってもらった。夏休みの最終日である8月31日にも海に連れて行ってもらう約束をしていたが、当日になって、テツの家の誕生会に行くことになってしまった。

 さゆきと真ちゃんは季節外れの海で水を掛け合い、はしゃいだ。真ちゃんは「この夢、力ずくでもかなえるために新宿に行く。ごめんな」と告げた。さゆきは「いいな、真ちゃん。うらやましい」と口にした。真ちゃんは「そう。おれの歌みたいなものが、さゆきにもあるんだ。さゆきにしかできないこと。それはさゆきが自分で見つけるしかないけど、きっとあるよ」と返した。「やりたいことやるために生まれてきたんだからな、おれたち」とも。

 さゆきは「覚悟をかためた真ちゃんは、バンドが成功してもしなくても、きっともうこの家にはもどらない」と思った。

 そんなさゆきに、真ちゃんは「自分のリズムを大切にしろよ」と声を掛けた。真ちゃんは大切にしていたドラムのスティックをさゆきに贈り、「これからも「さゆきがさ、まわりの雑音が気になって……親とか、教師とか、友達とかの声が気になって、自分の思うように動いたり笑ったりできなくなったら、そのときはこのスティックでリズムをとってみな。さゆきにはさゆきだけのリズムがあるんだから」と告げた。

 真ちゃんが新宿に行ってから、4か月近くが過ぎた。さゆきが“もうひとつのわが家”と呼んでいた真ちゃんの家がどうなったのかは分からない。一度だけ、道で偶然、真ちゃんの母親に会った。真ちゃんの母親はドイツ語を習い始めたといい、「おばちゃん、楽しみだわ、さゆきちゃんの未来が」などと嬉しそうに言葉にした。

 通学路の街路樹をはじめ、クラス、担任など、さゆきの周りで色々なことがめまぐるしいスピードで変わっていく。しかし、さゆきは、もう怖がらないと決めた。

リズムの読書感想文


 「リズム」を読み終えて、さゆきに対する作者の温かい“まなざし”のようなものを感じました。

 さゆきは、いわゆる普通の中学生で、熱中できることも、やりたことも、やろうと決めたこともまだありません。

 でも、感受性が強くて、それ以上に、人間の悲哀とでもいうものを中学生にして体験してしまっています。真ちゃんはバンドが成功してもしなくてもこの家には帰ってこない、と感じていましたが、普通の生活を送っている中学生だったら出会うことすらないような場面だと思いました。

 もちろん、真ちゃんの未来には、栄光や挫折の物語が広がっているのだと思います。それはどんなものかは分かりませんが、何かをやると決めて進み始めた人間が作り上げるドラマだと思います。

 しかし、さゆきにはまだ何も始まっていません。

 ただ、作者は、そんなさゆきに対して、ラストシーンで、さゆきの人生と未来を全肯定するかのような温かいまなざしを送っているように感じました。

 さゆきはいつか、自分がやるべきことに出会い、人生を切り開き、そして、真ちゃんのことは忘れていくのだろうと思いました。

 男の子だったらいつまでの後ろ向きに生きてしまうこともあるのかもしれません。しかし、女の子は、周りに何があっても前を向いて、幸せを勝ち取るために自分の人生を歩いて行くのかもしれません。作者が見つめていたのは、そんな女の子の強さかもしれないと思いました。


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