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ラン/森絵都のあらすじと読書感想文

2016年9月22日 竹内みちまろ 参照回数:

ラン/森絵都のあらすじ


 22歳の夏目環は、中学1年生の13歳の時に、交通事故が原因で両親と弟を立て続けに亡くした。環を引き取っていた叔母の奈々美も病気が原因で他界。環は、肉親の死に直面するたびに、あの世とこの世の力関係が逆転し、死んでしまった人たちの側へと近づいていく気がした。

 奈々美を亡くしてから新しい街に引っ越した環は、必要性から、自転車店のサイクル紺野で一番手前にあったママチャリを購入。サイクル紺野の店主の紺野は、若い頃に妻を亡くし、一人息子も10年前に亡くしていた。

 ママチャリに乗り始めて3カ月ほどした際、ブレーキをかけるたびに悲鳴のような音がするようになり、サイクル紺野で研磨材を付けてもらった。紺野は、自転車を交換すると告げたが、環は「できればこれからも三日おきに研磨材をお願いできるとありがたいんですけど」と告げた。紺野は「もちろん、あなたの気がすむまでおつきあいしますよ」とうなずいた。

 環は、サイクル紺野に住み着いていた猫の「こよみ」を当初は、かわいいとは思えなかった。しかし、ほんの気まぐれでこよみの背中に手を伸ばすと、あまりに柔らかく、温かくて、その日から、こよみを追い駆け回すようになった。ある日、店内に椅子が置かれており、紺野は「いつまでも立ち話っていうのもナンだからね」と照れ臭そうに話した。環は、1年半をかけて、紺野と、映画や読書、一人前の料理術などを語り合う程になった。

 そのこよみが天寿を全うして亡くなり、紺野は、唯一の肉親である母親がいる山形に帰ることになった。紺野は、息子のためにパーツを取り寄せて作った「モナミ一号」というロードバイクを環にプレゼントした。紺野は「こいつは丈夫にできているよ。どこまでも行ける」と告げた。紺野の息子は、モナミ一号に乗ることなく亡くなっていた。

 環は大型マンション街の一角にあるスーパー・マーケット「24マート」でアルバイトをしていた。三畳ほどの部屋に籠り、カタログ販売の電話注文やネット注文に対応する仕事をしていた。以前はパート社員たちから昼に誘われたこともあったが、断り続けているうちに誘われなくなり、昼食も三畳の部屋で取っている。

 パート社員の1人から「ちょっと、あなた、アナグマさんよね」と声を掛けられた。環は、自分が「穴熊」と呼ばれていることを知り、「そういえば、もう長いことだれからも下の名前で呼ばれていないな」と感じた。環は、モナミ一号に乗って、2か月ぶりにサイクル紺野へ向かった。

 着いてみると、鉄筋2階建てだったサイクル紺野の建物は無くなり、更地になっていた。作業着姿の若い男が拾い集めているゴミの中に、紺野さんが「こよみ」と一緒に埋めた椅子があった。環は、若い男に、「そこに、その下に猫がいせんでしたか」と尋ねた。「墓か」と事情を理解した男は、「現場監督に聞けばわかるかもしれないけど、たぶん、聞かないほうがいいよ」と答えた。

 環は、サイクル紺野があった場所から離れたくて、やみくもにモナミ一号を走らせた。ペダルを漕ぎながら、環は、奈々美叔母さんの病気にもう少し早く気づいていたら叔母孝行ができたことや、9年前に弟の修とケンカをして家族全員で行っていた弟の病院通いに自分だけいかなかったこと(結果として、それで環は交通事故を免れた)などを後悔した。

 環はいつの間にか見知らぬ街を走っていた。尋常ではないスピードが、ただならぬ不気味さを帯びていた。ブレーキレバーは動かず、ペダルは環の意志とは無関係に回転し続けた。環は、自転車を走らせているのではなく、自転車に走らされていることに気が付いた。

 「−−そう。最初からモナミ一号は私をどこかへ連れていってくれそうな自転車だった」と感じた環は、どこまでも付き合ってやると思った。

 小道に差し掛かったところで、モナミ一号は停止した。足元に、死んだはずの「こよみ」がすり寄ってきた。「こよみ」に付いて行くと、8階建てのマンションがあり、環は迷わずに305号室へ向かった。マンションには、死んだときのままの若さの弟の修と両親がいた。

 環が迷い込んだ場所は、冥界のファーストステージだった。そこではまず、死者の魂の中でネガティブな記憶がら溶け始め、楽しい思い出もなくなり、やがて、魂は生まれ変わりを待つ場所であるセカンドステージへと向かう。冥界へは生きている人間は普通は来ることができない。しかし、環は、亡くなった紺野の息子がモナミ一号に強い未練を残していたために、モナミ一号に導かれて冥界に来てしまった。

 それから環は、何度も冥界に通うようになったが、ファーストステージのどこかにいる紺野の息子を探し出してモナミ一号を返すべきだという話になった。ただ、そうしたら、モナミ一号によって導かれている環は、自分の足で、約40キロの距離があるという冥界とこの世の境目である「レーン」を自分の足で越えなければならなくなる。家族は、環には無理だ、と口にしたが、環は「私、自分の力でレーンを越えてみる」と宣言した。

 環は翌日から、早朝のジョギングを始めた。ジョギングを続けるうちに、環は、「元天才ランナー」で中年男性のドコロさんこと木処泰介に声を掛けられた。木処が主催するランニングチームのメンバーになることにした。

 ランニングチームはメンバーを増やし、木処と環のほか、イタリヤ料理屋の見習いの大島くん、木処の姪っ子の小枝ちゃん、水商売の緑山清花、24マートのパート社員・真知栄子、早期退職した藤見さん、大学生のハタくんという8人のチームが出来上がった。

 ランニング雑誌「イージー・ラン」の「あなたのチーム訪問」のページに載りたいという木処の提案で、チームは全員が、42.195キロのフルマラソンに挑戦することになった。

ラン/森絵都の読書感想文


 「ラン」を読み終えて、チームを作るって、楽しそうだなと思いました。

 冥界に通っていたときの環は、冥界で家族に会うことだけが楽しみでした。そして、生きている世界の中では孤独で、流れ作業をするような時間だけを過ごしていました。

 しかし、そんな環ですが、木処のチームのメンバーになってから、日常が変わります。メンバーたちと練習に打ち込んだり、合宿をしたりするうちに、色々なことが起きます。

 自分を変えるには何か新しいことを始めてみるとよい、とはよく言われます。実際に、環はジョギングを始めました。しかし、環はさらに、1人でジョギングを続けるだけではなく、ランニングチームに参加するようになりました。

 もちろん新しいことを始めること自体も素晴らしいことですが、せっかく何かを始めるなら、1人だけでやるのではなく、チームに参加してみると、その始めた新しいことを1人で孤独にやるよりも継続して続けることもできると思います。そのうえで、チームのメンバーになったことで、自分一人では挑戦できないようなことにも挑むことができるようになったりします。

 そのうえで更に、チームとして活動する中で、色々な事が起きていくのかもしれないと思いました。

 人が共通の目的のために集まるチームというものは、何も学校の中だけのことではなく、自分の自由にできる時間やお金を作ることができる大人こそ、もっと、利用するとよのではないかと思いました。


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