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五体不満足/乙武洋匡のあらすじと読書感想文

2012年12月29日 竹内みちまろ 参照回数:

五体不満足のあらすじ


 『五体不満足−完全版』(文庫)は、1976年(昭和51年)に、乙武洋匡さんが生まれた時の様子が書かれた「まえがき」から始まります。乙武さんが、小学校、中学、高校、予備校へ進み、早稲田大学の学生時代を綴っています。また、ベストセラーとなった『五体不満足』(単行本)の出版後を語った「第4部−新たな旅路」と「エピローグ」が加筆されています。

 乙武さんは、先天性四肢切断という、「生まれつき手と足がありません」という状態で生まれました。乙武さんの母親が乙武さんに対面したのは、出産後1か月たった後。父親や病院側はショックに備えるなど最大の配慮をしたそうですが、乙武さんに対面した母親が最初に抱いた感情は、「驚き」や「悲しみ」ではなく、「かわいい」という「喜び」であり、乙武さんは、「生後1ヶ月、ようやくボクは『誕生』した」と記されていました。

 乙武さんの生活は、東京・江戸川区の葛西で始まり、幼稚園通学のため、幼稚園に近い世田谷区の用賀に引っ越し、小学校と中学校へ通ったことが記されています。乙武さんの受け入れに理解と情熱を注いだ学校に恵まれ、運動会の徒競走や、険しい登山ルートがある遠足、なわとび、水泳などをしながら、クラスメイトたちといっしょに少年時代を過ごしました。中学では選手としてバスケットボール部に入り、戸山高校ではパソコンを使ったデータ分析らを担う担当としてアメリカンフットボール部で活躍。乙武さんを門前払いしなかった駿台予備校で一浪して、早稲田大学に入学。エコや街づくりのイベントに関わるようになり、同時に、乙武さんの活動がマスコミで取り上げられ、講演依頼が来るようになった様子などが記されています。

 「引き裂かれる心」という小見出しで始まる「第4部−新たな旅路」では、『五体不満足』(単行本)出版から始まった苦悩が「想像を絶するものだった」ことが記されていました。1日に300件を越えるようになった講演依頼をすべて断るようになり、『五体不満足』(単行本)読者が期待している「天使のオトくん」「純真無垢なオトくん」と自分自身の実像にズレを感じます。人々が期待する「オトくん」を演じ続けたら、「自分が自分でなくなってしまうことに」気がついたエピソードが記されていました。朝日新聞から原稿依頼が来て、スポーツ雑誌『Number』でインタビューライターを体験し、「車椅子に乗っていることでもなく、有名人であることでもない、乙武洋匡の独自性」で勝負するライターになりたいと志します。乙武さん自身が多数のインタビューを受けており、乙武さんは、取材者に多くを語るのは、ライターに心を許した時であることを確信していました。

五体不満足の読書感想文


 『五体不満足』では、「ズルイよ!」という言葉が心に残りました。小学校4年生の時の遠足は、険しい山道がある弘法山(神奈川県秦野市、標高235m)でした。遠足の前の学級会で、先生が、乙武さんの母親から「『今回の遠足はお休みさせます』って言われたんだけど、みんなはどう思う」と投げかけます。クラスメイトたちは、「ズルイ」と言ったそうです。

 その時の様子が記されたページはくいるようにして読みました。クラスメイトたちは、乙武さんが行事を休むことが不可解で、「そんなに登るのがたいへんな山なのに、オトちゃんだけ休むなんてズルイよ」と声に出しました。乙武さんの担任を申し出たベテラン教師も驚いたとのこと。

 「ズルイよ!」という言葉を目にしたとき、特定の特徴を持った人を「不幸」にするのは、人々の心の持ち方なのかもしれないと思いました。同時に、「ズルイよ!」と純粋に口にする子どもたちがいるクラスを作ったのも、乙武さんや乙武さんのご家族をはじめ、学校や担任の先生、クラスメイト、そして、マラソンの練習の時に乙武さんが蹴り飛ばされないように順番に乙武さんといっしょに走るようにした上級生たちの心なのかもしれないと思いました。

 また、「オトちゃんルール」にも、はっとしました。「オトちゃんルール」とは、例えば、乙武さんがバッターの時に、打球が飛んだら、チームメイトが反対側のバッタボックスから乙武さんの代わりに走者として走るという決まりのこと。ほか、マラソンカードでは、1周で1マスのことろ、乙武さんは4マス進めることができたり、100メートルの徒競走では、乙武さんは50メートル進んだ地点からみんなと一斉にスタートするというものもありました。「オトちゃんルール」は、子どもたちの遊びの中から自然に生まれ、運動会の前には、担任の先生が乙武さんへ、「徒競走、みんなと一緒に走りたいか?」「じゃあ、ヒロだけ途中からのスタートにしようか。半分の50mでどうだ」と提案するまでに浸透していました。さらに、乙武さんが、「少し悩んだが、100mを走りきる自信がなく、その距離を走ることとした」と、しぶしぶ承知したともとれるような心を持っていたことも伝わってきました。

 何がよくてどうあるべきかは、簡単に言えることではありませんが、『五体不満足−完全版』を読み終えて、自分自身に尊厳を持ち、他者や社会に敬意を持って生きることができる人間になりたいと思いました。


→ だいじょうぶ3組/乙武洋匡のあらすじと読書感想文


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