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だいじょうぶ3組/乙武洋匡のあらすじと読書感想文

2013年1月1日 竹内みちまろ 参照回数:

だいじょうぶ3組のあらすじ(ネタバレ)


 生まれながら両手と両足がない27歳の赤尾慎之介は、4月から、新宿駅から急行で40分ほどの場所にある市立松浦西小学校に教師として赴任しました。5年3組の担任になります。赤尾は、大学卒業後、プログラマーとして働いていましたが、パソコンで英数字を打ち込む仕事を続けるうちに、「もっと血の通った仕事がしたい」と思うようになり、20年来の付き合いの松浦市職員・白石優作の進めで、松浦市が市の予算で採用する教員に応募しました。赴任後は、白石が介助者として付き添いますが、子どもたちは、「だいじょうぶ、なのかなあ……」と不安がります。赤尾は、「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」と念じていました。

 赤尾は、教室で28人の生徒たちと初めて対面したとき、全員の顔と名前を暗記していました。生徒たちは「先生、すごい!」と感動し、「先生、カノジョはいるの?」との質問が飛びます。「うん、いるよ」の返事で一気に打ち解け、「どうやって知り合ったの?」「芸能人で言うと、だれに似てる?」と矢継ぎ早に質問を向けます。赤尾は、校庭の桜の木の下で、花見をしながら、学級会を開きました。「だって、フツー、車いす乗った障害者が小学校で先生やるか?」という赤尾は、「オレの教師生活、“フツー”をものさしにするのはやめようと思って。子どものためになるのか、ならないのか。それを第一に考えていこうと思ってさ」と白石に告げていました。

 新学期がスタートしてから2週間後、赤尾のクラスで、ひとりの生徒の上履きが隠されるという事件が発生しました。5年2組の担任の紺野先生から、「新学期のこの時期にはよくあることなんだ。子どもたちが担任を試していると言ったらいいのかな」「で、おまえはどんな対応を取ったんだ?」などと声を掛けられます。赤尾は、朝の会で子どもたちに話してから、すっかり忘れており、何もしていませんでした。饒舌だった紺野先生は、黙ってしまいます。「やっぱり、マズかった……ですかね?」と恐る恐る切り出します。四肢を持たない青年教師の一年間が始まりました。

だいじょうぶ3組の読書感想文


 作者紹介で、乙武さんが、2007年4月から2010年3月まで、東京・杉並区の区立小学校で教諭をしたことが紹介されていますが、今回は、小学校の先生という仕事に焦点を絞って、感想を書いてみたいと思います。

 『だいじょうぶ3組』では、赤尾の熱血指導のもと、学校を何日も連続で休み始めた生徒が登校するようになったり、運動会の徒競走で1位を独占することを目指したり、水泳の授業や、険しい山道を登る遠足へ行くエピソードなどが綴られていきます。最初は赤尾にどう接していいかわからなかった子どもたちも、すぐに慣れて、赤尾が泳ぐといえば「手も足もないのに、そんなのムリに決まってるじゃん!」と声をあげ、遠足で登山することになると「今回の遠足って、山登りでしょ? 先生、ムリじゃん……」と赤尾を見つめるようになっていました。

 一方の赤尾は、中学生時代に学年で一番人気の女子に告白するなど情熱的な性格の持ち主ですが、他の先生から苦情を言われても、ナンバーワンになる可能性があるのに最初からナンバーワンにならなくてもいいよと子どもたちに告げるような教育のあり方はおかしいという考えを変えません。しかし、プールにAEDを持って行く担当だったのに忘れて叱られたさい、「たかがAEDを持っていき忘れたくらいで、あんなに怒らなくてもいいじゃないですかねえ。どうせ持ってったって、まず使うことないでしょ」などと、百歩譲ってそれが正しいことだったとしても、理性ある大人だったら口にはしないだろうということを、無神経に職員室で口にしてしまったりするところもありました。よく言えば、裏表がない、悪く言えば、思慮がないのですが、そんな赤尾が、50代半ばのベテラン教師に、上履き事件の対応を相談する場面がありました。

 赤尾は「ぼくはどうしたらいいんでしょう」と相談しましたが、ベテラン教師は、「冷たく聞こえるかもしれないけど、これ以上は赤尾先生がご自身で答えを出すしかない。わたしのクラスではなく、赤尾先生のクラスなんですから」と告げていました。社会人経験があるとはいえ、右も左も分からない新人から相談されたベテランが、自分で解決しろ、と、その新人を突き放すとは、教師の世界って、厳しいのだなと思いました。しかし、よく考えてみると、企業の営業の新規開拓だったら、当たって砕けろという言葉がありますが、仮に対応で失敗し、顧客を逃がしても、気持ちを切り替えて次のターゲットに絞ればいいのかもしれません(そもそも新規営業とはそういうものかも)。しかし、教師の生徒への対応となると、正解があるわけではない一方で、失敗はあってはならないものになるのだと思いました。また、営業担当者だったら、どうしてもその顧客に合わないと思ったら、別の人間に担当を変わってもらえば、その人にとっても、会社にとってもいい結果になると思いますが、クラス担任というものは、ベテラン教師が、「赤尾先生のクラスなんですから」と、最初から新人を助けることを放棄せざるを得ないほど、厳しい役割のようです。担任の先生というものは、なにがどうあってもその人がひとりで責任を負い、まっとうしなければならないものなのだなと思いました。


→ 五体不満足/乙武洋匡のあらすじと読書感想文


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